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東京湾をゆく船-61(オイルパステル)

今にも泣き出しそうなきなこ色の空。
(実際この後、強い雨に降りこめられる。)

昭和後半と平成の名女優、樹木希林さんが亡くなった。
我々の世代には向田邦子ドラマの「ハマさん」「ばあちゃん」の
悠木千帆としてのイメージが強い。
「樹木希林に改名」と聞いた時には冗談かと思った。
スクリーンでもTVでも不思議な存在感というか、安定感があって、
希林さんが出ていたらひとまず安心して画面を見ていられた。
ほかに代わりのきかない、唯一無二の役者さん。
松田優作の晩年もそうだったけれど、
亡くなる前、役者はそれまでよりも作品や世間への露出が多くなる気がする。
松田優作は陸上女子メダリストのジョイナーが役者に転身してすぐのドラマに
まさかと思うような共演をしたのを見て、「なんで?」と思ったものだった。
亡くなってみれば、1秒でも長く演技をしていたかったのだろうかと思った。
希林さんもまたそうだったのだろうか。
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東京湾をゆく船-60(オイルパステル)


連休初日は穏やかな天気。
雲は遠く水平線のすぐ上を青く覆っている。
光る水面を小さな運搬船が右へ、左へ滑っていく。
巨大なコンテナ船が多いこのあたりで、
この日はこんな小さな船も、押したり引いたりして働いていた。

建設会社に勤務する下の弟が、現場の二階から落ちた。
最初担ぎ込まれた病院ではレントゲン診断の結果、
意外にも「とくに異常なし」とのことで、三日目から現場復帰。
ヘルメットのおかげで頭が大丈夫だったのが幸いだ。
しかしその後、お盆休みを挟んで自宅療養しても、痛みが治まらない。
休暇明け三日間の出勤を経てなお痛みがひどいので、
松葉杖を貸してもらえないかと、先の病院へ言いに行ったところ、
「そんなに痛いならもう一度検査してみましょう」ということになった。
再度の検査で肋骨4本、足の甲と腰骨それぞれ一カ所の骨折が判明。
即座に入院したという。
そんなことってあるのだろうか。
骨折にセカンドオピニオンが必要な時代か。
今も自宅療養している弟の電話越しの声がいつになく弱々しい。
兄貴の私は「じきにくっつく。がんばれ」と声をかける。

真ん中の弟のぶどう農園が、今年何度もやってきた台風の影響で不作だ。
昨年もやはり台風でまともな収穫ができなかったのに、今年はさらに悪い。
そんな状態で、役者になるといって上京したセガレに、
わずかながら仕送りもしているという。
そんなことが可能なのか。
こちらも、とにかくがんばれと言う。

一番収入が不安定と思われた兄貴が、
会社勤めする弟と、ある勝算と強いポリシーを持って農園をはじめた弟を
「がんばれ」と激励する図はどうもおかしい。
骨がくっつき、空が晴れれば私の激励など、風にさらわれてしまうに違いない。
はやくそうなってほしい。
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岡山のぶどう
(オイルパステル)

秋の味覚、初物のぶどうをいただいた。
ぶどうといえば私にとって、山梨か北海道。
どちらも国産ワインの産地。
北海道では弟がワイン醸造用のぶどうを細々と作っている。
岡山のぶどうは、栽培していることさえ知らなかったけれど、
「ピオーネ」という岡山県特産の品種は巨峰以上に粒が大きく、色はやや赤い。
これはなかなか口にできない高級品。
大きな粒の皮を剥いて口に入れれば、口中に広がる酸味を含んだ甘みと香気。
こんなにおいしいぶどうがあるのだ。
最近の子供たちはぶどうジュースは好きだけれど、
皮をむいて食べるぶどうの実は面倒くさがる。
それを幸い、家内と二人であっという間に一房がなくなる。
めったにテーブルには乗らない大粒ぶどうのもう一房は、
部屋に運んでモチーフにした。
ぶどうの実は、こんなにたくさんついているのに、
色はすべて微妙に違うところが美しい。

東京に来る少し前、
アミの入ったメロンをもらって描いたときのことを思い出した。
入院患者へみやげに下げてくるあのメロンを、
友人の家に遊びに行った帰り、どういう経緯だったか、もらって帰った。
時間をかけて克明に描写したので、
初めて手に入ったそのメロンは、描き終わったときには腐っていた。
あんなふうに詳細には、今は描けないし描かないな。
けっきょく本物の網タイツをはいたメロンが
初めて私の口に入ったのは、友人の結婚式でだった。

ぶどうの房は描きやすいけれど、画にするのは難しいと思う。
あまりに多くの人が描いていて、画に鮮度が生まれにくい。
以前に描いたものは、学生のデッサンみたいになった。
あれから三年、少しは前に進めただろうか。
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東京湾夕景-03(オイルパステル)

とくにきれいな風景があるわけでもないのだけれど、
この東京湾の風景、見ても描いても飽きない。
見る人はとっくに飽きていると思うけれど。

しかし首相はあれだけの騒ぎを起こして、
グレーのまま再選目指して立候補とは、よくできるなと思う。
しかもほぼ再選は確実なんだという。
立つほうも支えるほうも誰の方を向いているのだろう。
スポーツ界の醜聞追求に注がれたマスコミのエネルギー、
もう少し政官へ注げなかったものか。
反撃しない、できない相手に容赦ないペンをふるい、
強い相手には腰が引けている。
多くの税金がおかしなことに消え、おかしな発言や人事がまかり通り、
役人の信頼は地に落ちたのだ。

政治家になりたい若者が急減しているらしい。
TVで彼らを見ていて「なりたい」と思うほうがよっぽど怪しい。
ピンチをしのいで「やれやれ」と思っている彼らの罪は重い。
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NHK_フジタ

NHKでフジタの番組を見る。
番組内容がほぼ同じ、日曜美術館と特番の二番組を
同じ日に放映する力の入れようだ。
NHK主催の展覧会に合わせた企画番組のようで、
近年フジタの遺品がフランスに寄贈されたと紹介されていた。
その遺品に混じって発掘された録音テープ、
そこに残されていたフジタ本人の声を初めて聞いた。
NHKとしては、これが今回のスクープなのだろう。
晩年の録音なのでやや老いは感じられるものの、
聞き取りやすい、アナウンサーのように通る声。
女性にもてる男というのはまず声がいい。
声の良さは説得力の強さに通じる。
フジタの声は初めて聞いたにもかかわらず、
思っていた通りの声、という印象があった。
しかし自作自演の講談は陽気なお面をつけているにもかかわらず、
にじみ出る寂しさは隠しきれない。

Foujita_02
Foujita_01

野見山暁治さんのエッセイに、画家晩年の姿を伝える文章がある。
それは巨匠がパリの夜の街角にひとり立っていて、
その孤独な背中をフチ取るような、文字によるデッサンである。
初めて聞くテープの画家の声には品があって、艶さえ感じられるにもかかわらず、
野見山さんが書き残した老いた巨匠の弱々しい輪郭を、
そのままなぞるような音声だった。
その頃の日本人絵描きがどれほどか夢見たフランス、
彼の地で日本人として唯一無の成功を手に入れたフジタは逆に
祖国と決別しながら、どうしようもなく日本への郷愁を募らせていた。
テープの肉声はその悲哀をとどめている。
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雲海(陣馬形山から)
(ガッシュ)

8月後半の週末に、長野へキャンプに出かけた。
うちの家族だけのキャンプは数年ぶり、ほんとに久しぶりで
佐渡や東北へ一週間かけて、海や温泉をめぐったのが懐かしい。
そこは山の頂上にあるキャンプ場で、
今どき無料というのもありがたいが、山のてっぺんにあって、
炊事場の水道から水がふんだんに出てくるのが不思議でならない。
翌朝は、眼下に雲海おりなす地球の柔らかなじゅうたん、
その眺めがまた素晴らしかった。

夜、下の町では花火大会をやっていたようで、
くぐもった破裂音とともに、小さな光のぼんぼりが現れては消えていた。
けっこう高所なのに、一番薄い寝袋で寝ても暑かったのが、今年の夏らしい。
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