取水所-3
(油彩、F6)

よく晴れた日の夕暮れ時、風の方向が入れ替わり、凪いだ時間帯になる。
ペンと色鉛筆で描いているうち、これは油彩の方がここの空気感が出るように思った。
週末天気が崩れ、自宅でペン画から油彩に移してみることにした。
ペン画の印象をそのままに油彩へ写したところで、
このまま描き進めていいかどうか、迷う。

右の堰の上に腰掛け、終日水面を見つめている職員の人がいた。
目の前の水際に差した木の枝を時間をおいて見にくる。
どうも水位を調べているようだ。
仕事をしているとはいえ、堰をぬける水の流れの音、
ときおり跳ねる魚のしぶき、
水面を滑るように滑空するシラサギや鵜の飛翔。
時間が止まったような風景というより空間を見つめて過ごす勤務がうらやましい。
日除けと辛抱が必要とはいえ、川面を終日目視するというアナログな仕事が
都の公の仕事として存在するというのが面白い。
関連記事
スポンサーサイト

Tag:Landscape Paysage 風景画

多摩川調布取水所-2
(ペン、色鉛筆)

青のインクでの描写が続いたので、ひさしぶりに黒のインクで描いてみた。
先週と同じ、対岸に取水所を見る川岸は、水かさが増えて水没していた。
この日はすこし高い場所にイーゼルを立てた。
夕暮れの凪いだ時間帯、ここの平凡な風景がベックリンの島の風景に見える。
ときおりはねる魚が、水面に輪を描く。
あたりは耳鳴りが聞こえるほど静だ。
モノクロだけでは惜しい色彩を前に、色鉛筆で淡く色をつけた。
今度もう一度ガッシュで描いてみようと思う。

朝起きたらあの共謀罪もこの国で採用されているんだろうか。
五輪のために必要で、それゆえ急ぐのだという。
豊洲も五輪のために急ぎすぎたのだろう。
それら首都圏の建設工事のために東西の被災地の復興工事も遅れている。
社会やみんながもっていたとても大事なものと引き替えに五輪は開催される。
いったい、何のために必要だったのだろうと思う。
関連記事
川沿いの町
(ペンとインク)

主に近所を描いているけれど、たまに連休などがあると遠くへ行ったりもする。
遠くといえば、ときどきは海外の街を描いてみたい衝動にもかられる。
仕事場の相棒とかつて出かけた海外への旅のことを振り返り、
「今だったらとても行けなかったですよねー」と言っていたが、
本当にそうだったろうか。
よその国を見たい、まだ知らない国を見て見たいという若い好奇心が
それでも警戒心にまさっていたような気がする。
しかしもう海外へ出てゆく機会はないだろうなぁと思う。
もし今行けたとしたら、絵を描く以外に最近ペンで描いているので、
古い文房具屋に入って知らないメーカーのインクを漁ってみたい。
その土地をその土地で買ったインクでデッサンしてみたい。
そんなことを想像するのもなかなか楽しい。
関連記事
多摩川調布取水所
(ガッシュ)

多摩川は先月、鮎の遡上シーズンを迎えた。
6月に入っても調布取水所のあたりにはたくさん泳いでいるらしく、
シラサギが河床をつついている様子があちらこちらで見える。
浅瀬でサギの接近に驚く鮎の群れが、さざ波のように震えている。
鮎をつつく様子を近くで見ていると、なるほどうまそうだ。
今まで川魚はニジマス、イワナ、ワカサギ、ヤマメ、鯉などを食べたことがある。
イワナもマスも美味いが、ヤマメが一番だった。
イワナは刺身や焼き以外にも骨酒、骨せんべいにできて、残すところがない。
信州の山の中で釣って食べた味は忘れられない。

1970年頃までは、この画の右側に少し見えている堰(調布取水所)は
都民の飲用の取水所として現役だったようだ。
川の汚染がひどくなって以後、取水は工業用水として使われている。
その後川の水は浄化が進み、今では百万尾単位で鮎が遡上するほどになった。
画を描いている時にも、堰の向こうでは若者が水遊び、というより泳いでいる。
遊泳禁止のはずだけれど、そのあたりは流れが遅く、浅い。

右に見える堰は昭和10年に作られたそうだけれど、
画の白い取水所の建物も同じ頃作られたのだろうか。
通りかかるといつも西日を受けて、
真っ白、あるいはオレンジの影を水面に落している。
この日、イーゼルを立てた頃にはやや風があり、
水面にちりめんじわが広がって白くなっていた。
その水面わずかの上空を鵜が川上に向かって飛んでいった。
日暮れに近づくに従って風は止み、水面には建物の鏡像が現れた。
関連記事
まだ風は気持ちよく、蚊も出ていない川岸の風景。
月初めに千葉へ遠出した日が早くも懐かしい。
ほぼ同じ方向に向かって、川崎側と対岸の東京側から描く。

川沿いの建物
(ガッシュ)


白い建物
(ペン、インク)


最近彩色部分に使っているのは下の写真のブルーインク(筆記用)。
雑貨屋で6年ほど前に購入したもので、メーカー不詳。
水で溶くと顔料の比重の違いから来るのか、
薄いところからシアン系、パープル系、コバルトブルー系へと色の変化がある。
(背後の文字はゴッホの書簡で、このインクとは関係ありません)

20170601_ink.jpg
関連記事
Le Havre
(ペン、インク)

最近、昔見た映画を何本か再見し、そのどれもがよかった。
映画を見るのは好きだけれど、それについて文章を書くのは苦手で難しい。
再見してやはりよかったので、忘れないように書き留めておきたい。
うち一本はアキ・カウリスマキ監督の「ル・アーブルの靴みがき」で
カウリスマキ監督にしては珍しい、明るいハッピーエンドになっている。

舞台となるフランスのル・アーブルに、
仲がいいのか悪いのかわからない移民たちが暮らしている。
ふだんはバラバラに生きている彼らのうち一人の靴みがきの男が
アフリカからの難民の子供をかくまったのをきっかけに一つになり、
その子を母親が住んでいると信じるイギリスへ向けて送り出す、というストーリーである。
シリア難民問題以前の作品だけれど、
移民、難民への風当たりはそれよりもずっと以前から強かったのだとわかる。
この問題について日本は物言える立場にも資格もない。
この監督の映画に出てくる人物はどれもがぶっきらぼう、
ストーリーもぶっきらぼうながら、じんわりとあたたかい。
近所のTSUTAYAではどういうわけかコメディの棚に並んでいるくらいで、
映画はけっして暗くはない(でもコメディでもない)。
監督は日本の小津安二郎監督を非常に尊敬していて、影響も受けていると言っているけれど
小津作品のように虫も殺さぬような善人ばかりが登場する非現実的な世界ではなく、
社会、それも多民族社会に置かれた一人の人間としてのリアリティがある。
再見したが、やっぱりよかった。
いい映画というのは繰り返し見てもやはりいい映画のことをいうのだろう。
関連記事

WHAT'S NEW?