多摩川春の色
(ガッシュ)

約二ヶ月ぶりにやってきた多摩川河川敷の風景は一変していた。
すでに桜は終わっていて、枯れ枝のシールドには若葉がつき、
河原は雪が降り積もったように一面白い花に覆われていた。
これはハマダイコンの花で、近づくと白より紫の部分が多い花だとわかる。
さらに花に触れると花粉がパステルのように付き、
うっかりすると衣服が黄色の斑点になっていたりする。
ダイコンといえば気になる根の部分は、売られている大根よりは細いものの、
食用にできるというから一度試してみよう。

二子玉川までさかのぼると、花は白から黄色に変わる(昨年はそうだった)。
春の河原に咲く黄色い花は菜の花だと思いがちだけれど、
多摩川に自生する多くはセイヨウカラシナだそうだ。
セイヨウカラシナは菜の花より茎が細くて花も隙間を持って咲く、
というのが見分けるポイントらしい。
「らしい」というのはネットで調べたからで、
私は花の名前に疎くてレンゲやタンポポくらいしか知らない。
樹木の名前も知りたいとは思うものの、図鑑やネットの写真を見ても判別ができず、
いつもわからないままだ。
この絵の真ん中に見えているのは、多摩川の河川敷でよく見るシダレヤナギのようだ。

多摩川はひんぱんに河川敷の工事が行われているので、
植生はいろいろ変わってゆくそうだ。
しかしこんなに真っ白に染まった多摩川は印象に残っていないので
昨年より、ハマダイコンの花は増えているのかもしれない。
これがいつか、一面黄色の花に変わってしまうこともあるかもしない。
自然というのは面白く不思議で、しかも理にかなった風景を作り出している。
この日は眠くなるような初夏の日差しの中で、何も考えずに描いた。
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夜の桜
(パステルジェッソにパステル)

満開の夜桜を描きたいと思っていた。
花見客や酔っ払いがいなくて、しかも画を描くために手元が見える程度の明るさがあって—
そんな場所が最寄り駅にほど近い神社の参道にあった。
境内は少し高台になった小さな公園があって、
ありがたいことに人は見当たらず、路上生活者がひとり、夢の中。

人のいない夜の桜は、一種荘厳な感じがする。
坂口安吾の「桜の森の満開の下」を二十歳頃に読んだ。
桜の下から人間を消すと、怖ろしい景色になるという。
小説は現代の酔漢あふれる花見風景の随筆風の語りから、
「昔」の山賊の物語へと入ってゆく。
残虐非道を働いてきた山賊の男が一人の女をさらってくる。
女は男の女房に収まると、別人のように傍若無人に振る舞う。
男に強奪した金品ではなく、襲った人間の首をほしがる。
男はそんな奇妙な女に、次第に惹かれてゆくのだった。
女を背負って満開の桜の木の下を男が通りかかったとき、背負った女は鬼に変わっていた。
安吾の絢爛とした語りがこの世のものとは思えない満開の桜の森を想像させ、
二十歳前後の当時、陶然とした記憶がある。

一日中降っていた雨が夜にはやみ、
これがこの春最後の機会と思って出かけたのはすでに夜更け。
街灯が点いているとはいえ、暗い中でとんでもない色を塗っていないか、
心配したほどには違っていなかったようだ。
でも帰宅後フィクサチーフをかけると、微妙な色は沈み、
せっかくとらえた色は消えてしまった。
ベースのパステル地塗り用ジェッソを使うと、とくにそうなる。
再度「明るすぎか」と思うほどやや濃いめにパステルを塗り直す。

都内で見る桜のある風景とは、たいがいが道の両側に並ぶ通り抜けか、
大きな公園でも他の樹木と混ぜて計画的に植えられている。
桜の森とはどんな風景だろうか。
画題になったここの桜は、とうてい安吾の世界にはおよばないけれど、
風に花びらが舞って、スノードームのような趣きがある。
どこかにあるのなら、桜の満開の森を、夜に見てみたいものだと思う。
安治川風景 1993
(水彩にパステル)

先週の大阪市中央卸売市場のかつての風景に加え、
その南側に流れる、これは大阪の安治川岸風景。
以前はこんな感じでさび色の岸壁に砂利運搬船のような
これも赤さびた貨物船が何艘も係留されていた。
対岸の風景も大きく変わったようだ。
住人には明るく健康的な風景の方がいいに違いない。
しかし追憶の中ではすり減ってくすんだような風景もまた、忘れがたいのである。

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三角屋根のある風景-2(水彩にパステル)

アレルギー持ちには悩ましい、花粉症の季節に入った。
昨年は症状が出るのが遅く症状も軽かったが、今年は例年並み。
これから重くなりそうで憂鬱だ。
今週末は出かけるのをやめにして、先週の水彩を元に
再度久々にパステルで描き直してみた。

フィキサチーフはシュミンケを使ってみた。
何年か前にセールで1500円の格安で出ていたのを買っておいたものだ。
その頃は、高価なメーカーも「お試し」ということだったのだろう、
ホワイトのみだったけれど、パステルも1本150円で売られていた。
初めて使ったシュミンケのフィキサは噴霧した直後にはやはり色が沈んだが
しばらく置くと、着色時のマットな明るさが戻ってきた。
今まで使ったフィキサの中では噴霧後のパステル粉の変色が最も少ないように思う。

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三角屋根のある風景(ガッシュ)

先週と位置を変えてみた。
こちら側は少し陽があたる。
神社の宮司さん、境内の落ち葉は散るにまかせ、
この辺りは掃かないようだ。
葉はふっくらと散りつもり、足の裏の感触がやわらかい参道。
見上げれば屋根と枝、上に、奥に向かって続く
45度のパースペクティブ。
空に散り広がる枝の穂先は、一年で今が一番清潔で美しい。
それに比べれば人が作ったものというのはどうも薄汚い。
薄汚いが、それがある年月を過ぎたあたりから美に転換し始める。
ようやく「そこにあるべきもの」になった頃、
年月をかけて美しくなった壁や屋根はある日、
きれいさっぱり無くなっていたりする。

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