先週は師のUさん宅へ新年の挨拶に出かけた。
昨年の夏はUさんの体調が優れず、その日が一年ぶりの訪問となった。
元気な顔を見ることができてなにより。
私は最初に会ったときのUさんの年齢になり、Uさんはさらに20の歳を加えた。
マンションの隣には別のマンションが建築中で、
6階の部屋の窓一杯にクレーンが斜めに横切っている、シュールな景色となっていた。
室内に目を移すと、例の壁ギャラリーには切り抜きが一枚だけ増えていた。
最近良いものを見ないという。

切り抜き20150119

いろんな話をした。
どんな話題にも深く納得がいき、
会わなかった一年の間についた垢や汚れを洗い落とした気分になる。
ところで、と前置きして
話題は年末に見たTV番組、鑑定団に出た一枚の画の話に移った。
依頼人の若い姉妹がお袋さんから引き継いだ、
日本人なら聞けば知らぬ人のない高名な女流画家の作品という画だった。
お二人は「高額ならば処分してお金にしたい」という、率直な希望をもっての依頼だったが
一見してまずい作品で、依頼人の若い姉妹の人には悪いけれど、偽物だろうと見ていた。
ところが、「間違いなく本物です」という鑑定に、こちらが仰天した。
最近はほとんど見ていなかったこの番組、Uさんは毎回見ているので、
もしや記憶にあるのではと思って話を振ってみたら、よく覚えているという。
やはり「まずい」作品だったのにシロ鑑定が出たので覚えているとのことだった。
もし真筆ならば、出来の悪い真筆ということで、
あんなに立派な画家も時にはあれほどまずい作品も作るのだということになる。
ほんとうだろうか。
私は、画家はやはりあの作品を描かなかったのだと思いたい。

ところで、そういう話のあとではとても気が引けるのだけれど、
次は持参した私自身の作品を「鑑定」してもらう番になった。
昨年の主に前半に描いた油彩の風景画はちょっとどうにもよくなかった。
自分でもそれはわかっていたけれど、それで秋の終わり頃からはじめたのがペン画だった。
こちらは、なかなかいいということだった。
でもペンのデッサンはどんなに描いてもやはり習作でしかない。
これをいかにタブローへ活かすかが今年の課題になりそうだ。
人物作品はたった2枚ながら文句なくいいということだったが、
人を描きたいのは山々なものの、こちらはモデルがいないと描けない。
仕方がないから川べりに生えている木をモデルにしている。
次にここへやってくるのは6月頃か。
それまでに少しは前へ進んだ画を持ってこないといけない。
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Tag:Landscape Paysage 風景画

師の壁スクラップ2013-1

年末にこちらに来てくれた独り身の父が新年明けて奈良へ帰り、
東京の師へ新年の挨拶に伺う。
師宅へは半年に一度伺い、その間に頭の中でいろいろ考えたこと、
疑問に思っていたこと、師が何を考えていたかなどを広く話題にしたあとに、
私の筆からなる半年の成果(作品)を見てもらうのは楽しみであり、試験のようでもある。
師自身は画を描かないが目はこの上なく確かだ。
おだやかな批評を聞きながらも後で思い返してみれば
私の未熟な作品に(おそらくは傷つけないよう)言葉を選んでいたのだと気づいて毎度凹む。

師は昨秋に引っ越しをしていた。
例の壁スクラップは一旦なくなり、切り抜きはまた一枚目から始まっていた。
右はわからないが、左は仏師康慶と、その弟子達の手による興福寺蔵「法相六祖」のうちの一体。
康慶は運慶の父にあたる。
この時代は運慶以後だけでなくその前の仏師も圧倒的な力量があり、
技術は連綿と続いていたことがうかがえる。
今の時代、最も愚かだったのは
職人をはじめ、あらゆる社会において日本の徒弟制度を破棄してしまったことだと師は言う。
師の壁ギャラリー2012-1

今年も東京の師の牛島さんのところへ年始の挨拶がてら、窓ふきに出かけてきた。
老人、といっては失礼だけれど、年をとってきついのは掃除であり、
なかでも窓ふきは一番きつかろう、と思ってお節介の押しつけに伺い、
今年でもう3年目になる。
それまで長く疎遠になっていたものの、ふたたび訪ねるようになったのは
私が画を描き始めたのがきっかけだった。
ご自身で画を描いたりはしないが、すばらしい目を持っている。
家にいる時は(ほとんどいるが)本を読むかTVを見ている。
落語を含めたお笑い(最近レベルが下がったと嘆く)を含め何でも見るが
自然科学と美術、そしてとくに「なんでも鑑定団」を夫婦(結婚はしていない)で見るのが好きで、
美術工芸・骨董などの真贋判断で誤ったことがない。
判断基準は「作品の持つ緊張度」だというが、これにはちょっと驚く。
私が自分の描いた画を持って訪ねるのはこの「眼力」という計りにかけてもらうためでもある。
師のスクラップ

話が前後するけれど、
先日肖像画で描いた師の宅にうかがったときのこと。

氏は本をよく読み、映画もビデオだがよく見る。
しかし読んだ本は捨ててしまい、ものをほとんど持たないので
部屋はいつ行ってもがらんとしており、
置いてあるものも位置もほとんど変わらない。
部屋にあるのはテレビとたばこ盆、そして分厚い無垢板のちゃぶ台だけ。
そしてお気に入りの絵などの美術記事を切り抜いて留めた壁は
氏のスクラップ帳であり、マイギャラリーでもある。

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