この夏はこれまで以上に戦争について語る高齢者の言葉が耳に残った年だった。
印象的だったのは水木しげる、浜田知明、藤城清治などどれも作家の言葉である。
少し若くなるが、宮崎駿の言葉も印象に残っている。
みな戦争経験者で、宮崎監督以外は出征経験がある。
藤城清治というと子供に向けたファンタジー画の作家というイメージがあったが
震災被災地や原爆ドーム、その他ファンタジーのモチーフになりそうにもない
長崎軍艦島や桜島遠望などを描いた作品は驚くべき密度の作品である。
しかも切り絵の制作は複雑な工程を経るにもかかわらず驚くほど早い。
私は二度ほどその原画を見たことがあるが、決してきれいなものではなく、
裏から光を当てて影絵になった時に初めて美しい画となっていた。
番組で見るアシスタントへの指示、演出への厳しさは宮崎駿監督に近いものを感じた。

版画家の浜田知明の番組(日曜美術館)はとくに忘れられない。
最近の日曜美術館のなかでも優れた仕上がりになっていて、私はビデオで2度見た。
日曜美術館 浜田知明

今まで長く語らなかった画家が、
重い口を開いて戦時中の経験を元に語る言葉はひじょうに厚く重いものだった。
幻想的、象徴的な作風の画家が、中国で自分が見てきたことを
できるだけ見たまま描こうと思ったという作品に、
私を含め戦争を知らない世代はどう感じるのだろうか。
そして90歳を超える作家の口を開かせる現在の世の中を思わざるを得ない。
このような作品を家の壁に飾ろうという人は少ないと思う。
これを見て「画家のみが見る美」や「愚かな人間への愛情」と思う意見には
私はまったくうなずけない。
浜田氏の番組での沈黙は否定的に受け取るべきように思う。
番組最後に浜田氏は近作の老婆の裸婦彫刻を指して
「人が見てきれいではないものを含めて、真実を伝える必要がある」と語った、

ちなみに番組は95歳の画家の取材に対し、
番組ディレクターと撮影のカメラマンは70歳なかばとのことである。
放送局で70歳代現役というのもすごいが、語る画家はさらに20歳以上も年長だ。
反原発デモの時といい、現在の高齢者のエネルギーというのは尊敬に値する。


そういった今年の夏であったので、
今まであまり読んだこともなかった日本の近代史の本を、少しずつ読みはじめたりした。
読んだことが身につけばうれしいが、記憶力が悪いのは今に始まったことではないので
読んだ尻から忘れていてまったく不毛な読書である。
にもかかわらず忘れられないのが
日本がかつて戦争にいたった以下のようなプロセスである。

・まず恐れるべき、あるいは憎むべき敵を作る
・次いで新聞に侵略の恐怖、憎悪を新聞に宣伝させる
・相手は軍備を増強しているからこちらもそれに備えるべきと軍事費を増やす
・どこかで衝突を作って火をつける
・国はこれを侵略ではなく、国益または平和を守るための戦いだと言い
・国際的同意(当時は国際連盟)、合意を得るというプロセスを経ずに軍を送る
ここからは全面戦争へ一直線。

これは日中戦争、満州事変の記録である。
今の日本の状況に極めて似ているだけでなく、
どこの国にせよ戦争というのは今も同じようなプロセスをなぞっているように思える。
(今日も、と言った方がいいかもしれない。)
人間というのは明日ではなく、昨日に対してのみ賢くなれる、という格言があったが
はたして昨日に対してさえ賢くなれるのだろうか。
非常によく似た事件である張作霖事件において抑止力となった新聞が
数年後の満州事変においてはあおりに煽ったのは、軍が昨日に学び、
新聞や日本放送協会(NHK)をすっかり抱き込んでしまっていたからという
皮肉な話も書かれていた。
また、当時はアメリカの大恐慌の影響が日本にも及んで
民間の不況はもちろん、世は軍縮へと向かっていて、
企業を含め平和時には必要のない軍部にもリストラの風が吹いていたとある。
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