野島崎灯台
(ガッシュ)

2011年のベン・シャーン展の図録の中に、安西水丸さんのインタビューが掲載されている。
「この画集は宝物みたいで、何度見たかわかりません」と言っていたのは
「世界名画全集 16 ベン・シャーン」(平凡社刊)という本だ。
全集というにはけっこう薄く小さめの本で昭和37年に発行されている。
展覧会図録の中で、水丸さんのその記事を一番よく覚えている。
水丸さんが勧めていたせいかわからないけれど、
この全集が古書店でただ同然の価格で売られている中で
ベンシャーンの巻だけやや高い。
水丸さんはこの本でベン・シャーンをはじめて知り、
当時のクリエーターのほとんどがそうであったように、のめり込んだ。
私は、水丸さんの記事を読んでこの本を買った。
紙も薄く印刷も現代とは比べるべくもないけれど、
力の入ったページは別刷りでのり付け製本されていて、けっこう味わい深い。
装丁デザインはあの原弘。
ちなみに水丸さんはデザイナー時代に平凡社に勤めていた。
同僚には嵐山光三郎氏がいて、同い年だった。
嵐山氏は自分が当時関係していた雑誌ガロに水丸さんを誘い、
水丸さんはそこで漫画を描くことになった(編集長は南伸坊氏)。
(同時期に電通時代の同僚だった荒木経惟氏もガロに連載を持っていた。)
ここで初めて「安西水丸」のペンネームを使った。

水丸さんゆかりの地をたどる遠出は最後の場所へ。
野島崎灯台は水丸さんが少年時代、ここを写生してコンクールで金賞をもらった。
以来、イラストレーターになってからも繰り返し描いている。
日本初の洋式灯台で、下には資料館もあるのだけれど、
私が着いた時には職員の人がまさに退館しようと施錠している時だった。
海岸側の遊歩道へと回って描く場所を探す。
ゆかりの地めぐりは水辺ばかりをまわった。
水辺の画家マルケ、水丸さんもとても好きだったそうだ。

少しずつ辺りは暗くなってくる。
早々に岩の上に場所を決めた。
着彩しようと筆を持った時、灯台に光が灯った。
明治から毎夜灯り続ける海へ向けての安全の灯。
観光遺産にもなっているためか、灯台自体もライトアップされている。
手前には壁がはげかかっている、これも古い建屋があって、
屋根から大型のサイレンが突き出している。
海岸は冷えてきた。
ヤッケは潮風を浴びて湿っぽくなっていた。

野島崎
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