ザクロ仕上がる(M6)

 15, 2010 13:44
5つのざくろ

ザクロの絵の仕上げにかかっていると
子供の同級生のお母さんがPTA活動の話をするためうちの奥さんを訪ねてきた。
私は挨拶だけして隣の部屋で描き続けていたが
しばらくすると話し込むお母さんたちの傍らで
連れてきた幼い姉妹たちが退屈しはじめた。
絵もあと少しのところまで出来たので筆を置き、
まだ小さい彼女たちをつれて近所を散歩に出かける。
仲のよい姉妹の手をとって歩き始めるとふたりは唄を歌い始めた。
その幼い歌声に聞き入って、なんだかとても感動してしまう。

子供のサッカーチームの付き添いをしているうちに
すっかり体育会系のつきあいになっているお母さんたちの目には
日曜の午後に趣味の油絵を描いているお父さんというのは
おそらく地味で年寄りじみて映っていることだろう。
昨年までは私も子供たちと一緒にグランドへ出ていた。
「趣味を持ってていいわよねえ」と言われるのは好きではない。
妻も、もちろん近所のお母さんも、私がある程度の決意をして
絵を描きはじめたことなど知るよしもないし
「趣味と呼ぶなっ」と言ったところで意味はない。
家内をはじめ子供たちも、そして私の周りの誰もが
絵などに興味を持っている人間は一人もいないのがちょっと無念だ。
興味がないだけでなく、モデルになるのも一切お断りなので
人物(家族)の絵は残念ながらすべて写真で描かざるを得ない。
代官山あたりに、比較的安価で人物、そして
裸婦までも描ける教室がネットに出ていたので、いずれ申し込もうと思っていたら、
急激な景気の悪化でそんな親父の趣味のために家計を廻す余裕など
全くなくなってしまった。

この不況の深刻さは二年前、最初に予想していたほどにはならなかったが
それでも少年サッカーでつきあいのあったお父さんたちのうち
お二人が職を失い、うちお一人はまだ再就職先が決まっていない。
近所の懇意にしていた旅行代理店は店を閉じ、
友人のデザイン会社は何軒かが畳むか、給料未払いになっている。
親友のカメラマンは廃業寸前だという。
バブル崩壊時でもこれほどひどくはなかったから、
かなり深刻であるのは間違いない。
我が事務所も相棒と二人、なんとかやりくりしているが
一人分の給料を二人で分け合うような状態だ。
それでもまだ、休日には絵を描けてはいる。
相棒をハローワークの世話にならせずにいられている。
経営者として気持ちが追い詰められるようにならずに済んでいるのは
今ごろになって手にしたこの筆のおかげだ。
来客を通し、子供が遊び、食事を取る部屋とカーテン一枚を隔てた部屋が
今の自分の王国である。
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Tag:油彩 ザクロ 油絵 静物

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