パステルの下塗りとフィキサチーフについて(その1)

 08, 2012 01:20
ソフトパステル(以下パステル)の描画を自己流に試行錯誤している。
一昨年購入したパステルがどうも肌に合わずにほったらかしていたのを
再び手に取るようになったのは、ジェッソの下地の上に描いた絵肌がとても良かったから。
しかし定着用に吹くフィキサチーフが、色の変色を起こすと同時に
塗ったパステル面をマダラにしてしまう。
これを何とか解決できないかと、自分でいくつか実験して検証してみた。
コメントでもジェッソについての質問が多かったので、
大ざっぱな実験ですがここに書いておきます。なにかの参考にしてください。

あくまでも私の個人的な方法に派生した疑問の検証なので、
もっと本質的な回答が、どこかの入門書に書いてあるかもしれない。
・・・・

パステル用紙は、通常マーメイド紙のようなテクスチャーのある紙を使う。
表面の凸凹によってパステルがヤスリをかけたように削られ、
色の付きがよくなる。
同時に油彩なんかでは難しいマチエール造りがパステルの場合、
すでに紙の方に備わっているとも言える。
反面、この凹んだ所にパステルが入り込まないと、紙の地色が見えてしまう。
とくに暗い部分にこのピンホールがあると(白い紙の場合)実際よりも明るく見えてしまう。
これを防ぐためには、色付きの紙を使うか、私の場合はカラージェッソを下塗りにしている。

色紙は全体が均一の色なので、明るい部分まですべて暗い紙の地色が出ることになる。
私は明暗2種類のジェッソを使い、陰影によって大まかな画面の形もとっている。
そうすればここから先は色に集中できる。

ここでよく知られているドガの方法を書いておくと・・
ドガはあらかじめ描いたデッサンや写真を
トレーシングペーパーにモノタイプという版画、今でいうコピーのような処理を行い、
後から何枚でもトライが可能な方法を考案した。
一度仕上がった画を下敷きにするにも、トレーシングペーパーは便利だったのだろう。
これにより、下描きの作業を簡単にして
パステルでは比較的落としにくい暗い部分の明度を早く落とすことができる。

この便利な方法にも一つ問題があって、
定着用のフィキサチーフを最後にかけると、水分を吸い込みにくいトレペは
色が変わって、下に塗って隠れていた色が上層のパステル粉にとけ込んだり、
フィキサの霧が紙にはじかれて玉になり、マダラ化してしまうのである。
描き上げたばかりの滑らかなパステル面のこの変わり様は、実際かなり気になる。
ドガは部分的にパステル粉を液化して(ディステンパーといわれる)塗っているのは
この仕上がりのマダラ化に業を煮やして強引にとった方法ではなかったか、と思う。
それから100年、今に至ってもパステル用の完璧なフィキサチーフはできていない。
ところが、ドガはまだらになる副作用はともかく、
画面をさわっても指に付かない、ほぼ完全に定着可能なフィキサチーフを考案して使っていたとされる。
ドガは画材について化学的に非常に高度な試行と開発を繰り返した人だ。

そこまで研究熱心ではない私は、
ジェッソと手元にある市販のフィキサチーフの効用を試してみた。
下の写真、左から2-オイルパステル用、3-木炭用、
4-(ソフト)パステル用のフィキサチーフを用意した、というか、元々持っていたものだ。
ただ、木炭用はノズルがダメになっていて、実際は2と4の2本文のデータしかとれなかった。
fixatif

マーメイド紙にジェッソを塗った部分と塗らない部分を造り、
フィキサチーフをマスキングしてかけてみる。
パステル-例-2

1は何もかけていない状態、
2はオイルパステル用をかけた。
 パステルを塗った部分が少しやせた感じになり、色も少し変わっている。
 注目点はジェッソを塗った部分にはにじみが見られる。
3は霧状にならずにぼた漏れしたので検証できないが、やはりやせたり濃くなったりしている。
4はパステル用。専用にもかかわらず、やせて変色している。(右端は別の色)

わかりやすくするためにジェッソを下塗りしたものにパステルを塗り、
中央から左半分(4)はオイルパステル用、右(2)はパステル用を噴霧してみる。
パステル-例-5
なんとオイルパステル用の方が色が濃くなってはいるものの、
「やせ」、マダラ化は少ない。
(中央のフィキサチーフのかかっていない部分にも注目)

パステル専用フィキサチーフに絞って今度はジェッソ下塗りなしで試す。
上が元画で、下がフィキサチーフをかけたもの。
パステル-例-3
パステル-例-4
フィキサチーフの影響は少ないように見えるが
明るめの色が背景に塗った色にとけ込んでいるように見える。
やはりジェッソが原因か。。

今度はジェッソを薄く塗った場合についての検証。
まずこのように濃淡をつけたジェッソの下地をつくる。
pastel-ex_11
ここにパステルを塗ってみる。
pastel-ex_6

ここにフィキサチーフをかけてみる(ちょっと多め)。
pastel-ex_7
写真ではあまり変わっていないように見えるが、少しやせ、色は濃くなっている。
わかりやすいように、各パステル塗布面の帯の下半分に再度同じ色のパステルで塗ってみる。
pastel-ex_8
色はこれだけ濃くなっている。
それも、ジェッソを濃く塗った方がより影響が強く見える。

さらに、明るいベージュのラインを引いてみて、、
pastel-ex_9
フィキサチーフをかけると
pastel-ex_10
パステルのラインがやせてしまっているのがはっきりわかる。
二度多めにフィキサがかかった元のパステル面は、かなり変色してしまっている。
フィキサは薄めに何度か分けてかけないと画面にひどい変色を起こしてしまう。


結果として、ジェッソの下塗りはパステル面に
フィキサチーフの影響を与えやすくする、と言える。
あらかじめ色のついた用紙になにもせずにパステルを塗る方が、
ジェッソ下塗りした方よりきれいな状態で残せるが、それでも変色はする(濃くなる)。
また、色によって(ジェッソの上では)フィキサチーフの影響を
受けやすい色とそうでない色がある。

もう一つアイデアがあるので、次回、最後のトライをしてみたい。
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COMMENT 2

Thu
2012.02.09
03:06

タブロウ #3h4yWL0g

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Re: パステルの下塗りとフィキサチーフについて(その1)

hananoiroさん、その2をアップしました。
水彩絵の具についても検証してみました。
薄く塗った上にパステルを使うのは大丈夫のようです。

ジェッソはパステルの色を背景から支える、という使い方で、
さっと塗ってマチエールは作らない方がいいと思います。
むしろ、紙のテクスチャーをそのままマチエールに活かすほうが
私の場合は好きですね。

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Wed
2012.02.08
17:19

hananoiro #-

URL

Re: パステルの下塗りとフィキサチーフについて(その1)

こんにちは☆
丁寧な実験。とても参考になりました。
ジェッソを使うと自由に下地にマチエールが作ることができて
興味深いやり方だなあと思っていましたが、定着で色が変わるのは残念ですね。。
私もパステルは小下絵や写生の際に使いますが、
水彩の上に使ったりしています。(水彩だけでうまく行かないとき。。邪道ですが。。)
マチエールは作れませんが、色の変色は少ないように思いますが。。どうでしょうか。。?
次の実験も楽しみにしています。

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