残された石膏像

 17, 2012 02:33
かつて朝から晩まで、
研究所の教室内でモチーフとして向かい合った石膏像たち、
ブルータス、アリアス、ミケランジェロ、ジョルジョ、そしてヘルメス・・・
また新たな年が始まり、教室に新入りのセントジョゼフ像が並んだ日、
その大きさに驚いたことも忘れがたい。

我々は像に、白い惑星にうねる山脈を見、そして水のない海を見た。
これは人物ではない、立体なのだ、そう先生は言われた。

朝9時前に石膏室にはいると、ビルが閉鎖される夜8時まで、
食事もとったかどうかわからず、疲れも知らずにぶっ続けで描き続けた日々。

あの総合美術研究所の教室で、多くの若者達に感動を与え続けた石膏像が、
竹中先生亡き後、家の外に風雨にさらされるままになっていると
友人から知らせが届いた。
・・・・

近く処分される日を今は待つだけの白い群像。
阪神淡路大震災で砕け散った石膏像を、
当時急激に減りつつあった研究所の生徒のために
ふたたび買い揃えるのは並大抵ではなかっただろう。
それらの群像が今雨ざらしとなり、処分の日を待っている。
しかし家族を持ってみれば、
胸像とはいえ神殿サイズの石像を置くスペースは、どこの家庭にもない。
私も自宅でデッサンができるようにと、当時無理してヘルメスを一体購入した。
東京に出た私なきあとも部屋の一角を占有し続けたヘルメスは
その後やはり大震災で砕けた。
両親の上に落ちてこなかったことが幸いだった。
今、その貴重だった石膏像が引き取り手もなく放置されているとしても
私も友人もなすすべはない。
不思議なことに、当時立体としてしか見ていなかった石膏像が、
今は人格が見え、老いた兵士のように思える。


※石膏像はその後、何人かの卒業生の元に引き取られ、教鞭を執る教室にて
 後輩たちの教材として活用されています。

石膏像(写真は無関係です)
ヘルメスはこのあたりからの角度からが一番好きだった
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COMMENT 3

Fri
2013.10.18
15:58

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Sat
2012.02.18
02:51

タブロウ #3h4yWL0g

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Re: 残された石膏像

hananoiroさん、こんばんは。
石膏デッサンは、「つまらない」と思えば、これほどつまらないものもないでしょう。
私は研究所で初めて石膏像を見、初めてこの手で描写しました。
入所後半年以上の間はコーラ瓶やインスタントラーメン、豆腐などを描き続けたことを思えば
華やかなギリシア彫刻を前に、心が沸き立つような興奮を覚えたものです。
そういうのを経て、20数年後の今、今度は風景や人物を描くというのは
これまた楽しいですね。

石膏像は学生には描きたくて仕方がない人もきっといると思うんですが
自宅にまで置こうと思う人は少ないでしょうか。
セントジョゼフなんかは十数万円はするはずの像です。
引き取り手が一体でも見つかると良いんですが。。

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Fri
2012.02.17
20:46

hananoiro #-

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Re: 残された石膏像

こんばんは☆
朝から晩まで石膏デッサン。。に少し憧れがあります。
石膏像のデッサンを経験したことがないので。。

大きくて重い石膏像。普通のお宅ではなかなか保管できませんよね。
新しいのを買うと高価だと思うので、絵画教室や学校の美術部など。。
引き取り手はありそうに思うのですが。。簡単には行かないのですね。

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