「師の肖像 2012」

 18, 2012 13:45
上機嫌(6F、パステル)

半年が経ち、また描きためた画をもって師のUさんを訪ねる。
Uさんを訪ねる時は雨の日が多く昨年も雨だった。
12月と6月、年末と梅雨時だからあたりまえか。
仕事に追われる日が続いていたのでぽっかりあいた週末に急な訪問になったが、
体調も良さそうだったので頭を下げておじゃまする。
今の日本でいい話など一つもないから話が弾むはずもないが、
この半年の間に私が描いた画をはさんで口を開くと二人の会話はいつのまにか滑り出している。

今年に入ってから私は筆を一旦置き、パステルを手にしている。
もとは描いたキャンバスの置き場所が早くもなくなってきた、という物理的理由があったからだが
油彩よりうまくいっているように思っていたらUさんからもなかなかいいと言われた。

油絵具とパステルの最も大きな違いはその完成までの時間にある、という話が出た。
油彩は極端な話、終わりがなくいつまでも描き続けることができる。
筆を置くのは自分の判断である。
しかしパステルにはこれ以上は描けない画材の性質上の物理的終点がある。
描いた人にはわかると思うが、もうそれ以上はパステル粉が乗らなくなるのである。
強く着色して紙のテクスチャーも平滑になった画面にはスティックがすべって粉がつかなくなるか、
ある厚さになると仮にフィキサチーフで定着しても今度はパステル粉が剥離しやすくなる。
以前描いたセーヌ河の風景のとき、空にもうそれ以上パステルが乗らなくなってしまったことがあって、
最後はジェッソを塗り重ねてやっと思った色に定着できた。
そういうこともあって私の場合パステル画はけっこう短時間で完成してしまい、
それ以上色を重ねることもまたできないのである。
質感や本質を突きつめたり、じっくり取り組む人には不向きな画材かもしれないが、
「完成」への思い切り、集中度を高めるには良い画材のような気がする。
しかし、パステルを手に取ったことのないはずのUさんは、
どうしてそんな体験的知識を知っていたのだろうか。


以前ここで書いた「師の壁ギャラリー」は画の中のUさんから見て正面になる。
画左上に見えているのはそれとは別の新聞の切り抜きで、気に入った新聞広告が貼られている。
数年前から変わっていなくてかなり黄ばんでしまっている。
膨大な書籍を読んできたUさんはしかし自分自身では本も画集も持たない。
読めば捨て、気に入った画や写真があれば切り抜いて壁に貼るだけである。
欲しい本や画集があれば借りるより買い求め、カバーを含め大事に扱う私とは正反対で
私にはなかなかできないことだ。

画を前にして話すUさんは、とても上機嫌だった。
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Tag:肖像画 Portrait

COMMENT 2

Wed
2012.06.20
00:04

タブロウ #3h4yWL0g

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hananoiroさん、こんばんは。
知らない人を描くのは難しいでしょうしそんな機会もまたないと思います。
私は身の回りの手の届くものや近所の風景ばかりを描いていますが、人物はとくにそうです。

別れ際、描きすぎに気をつけて、省略を学ぶように言われました。
わかってはいるのですが、この画ではまた描き込みすぎていますね。
達者にさらりと描かず、かといって描き込みすぎないようにするのは難しいです。

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Tue
2012.06.19
16:56

hananoiro #-

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こんにちは^^
気持ちの入ったいい肖像画だなあと思います。
人物は描く側と描かれる側の信頼とか心のつながりのようなものが
良い絵になるか左右するような気がします。
絵を見せていただいて、羨ましい気持ちになりました。

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