50年前の画材

 14, 2013 01:27
今までペインティングナイフという画材は使う機会がなく、
正月の餅つきの時の後片付けなんかの「へら代わり」にしか使うことがなかった。
餅つくり

せっかくの下地、下塗りがナイフの左官屋作業によって
きれいに(?)塗りつぶされてしまうのが、どうも手が出なかった理由だった。
それが最近テクスチャーのある下地を作れることがわかって、下塗り時によく使っている。

私の最初の画箱は、母が若い頃、結婚前に遊び程度にやっていた油絵で使っていたものだ。
その中に入っていた筆や、使ったのかどうかもわからないペインティングナイフを
50年の時を越えて今、私が使っている。
どれも50年以上、おそらく最低55年くらい前に製造された画材であり、
母が結婚後はまったく使わなかったせいか、傷みが少なく今も使える。
私は使い方がいいのか悪いのか、筆も仕上げに使う細く柔らかいものを除いて、
2号以上の豚や馬の筆は油彩を始めてから3年間、ほとんど買い換えずに使い続けている。
ちなみに薄塗りのせいか、絵の具の消費量も少なく、基本の15色ほどのうち、
何本かは3年前に最初に買いそろえた絵の具チューブがまだ空にならない。
それがパレットナイフを使い始めると、絵の具の消費量がかなり多くなった。
50年前の画材

話を戻して、母の筆のうち一本は黒い軸のホルベイン製で、
なんとこの豚毛のKAシリーズは今も製造されている。
他は黄土色の軸に「Fukuodo Doi Osaka」と刻印された豚毛、
こちらのメーカーは今どうなっているのかはわからない。
ホルベインの筆は14号と太いので、画布サイズ6号かせいぜい8号止まりの私には使う機会がない。
時々使っているのは不明のフクオウドウの平筆である。
何より、50年前の筆を今私が使っていることの不思議さ。。

さてペインティングナイフである。
二本のナイフが交差したようなロゴマークの入った社名は「CROSS」と読める。
よもや製造元は消滅してわかるまいとばかり思っていたら・・・あった。
渋谷の画材店に並んでいるのを見つけたのである。
現在、画材店に並んでいるナイフは、これまで続いた円高のせいだろうか、
海外、それもイタリア製のものが多く、逆にホルベインなどの日本製は高い。
一番安かったのは、私が唯一以前から持っていたリキテックス社のものだ。
「CROSS」は岐阜にある川嶋工業社製で、刃物の老舗メーカーだった。
しかしかなり昔からペインティングナイフを製造しているにもかかわらず、
今では社の主要な生産品ではないのか、HPに製品の情報はない。
私はその日画材店で小さなものを2本購入し、自宅で新旧の同社のナイフを比較してみた。
写真で見比べてみる。一番下が母の遺品で50年前のものだ。
cross knife-1

なんと、全く変わっていない!
極めて薄く鍛えられた炭素鋼のナイフ部分はもちろん、柄の木の材質もおそらくは同じだ。
cross knife-2 cross knife-3

50年間、ほとんど製造方法、質、デザインの変更もなく、作り続けられている、
そのことに感動してしまった。
きちんと測ってはいないが、イタリア製品よりも鋼の板部分の厚みが明らかに薄くしなやかだ。
ちなみに、ナイフが入っていたビニールパッケージには、「ECONOMY CLASS」とあったが
これのビジネスクラスかファーストクラスの上位機種があるのかどうかは、
ネットでも調べてみたが見あたらなかった。

絵の具なんかは製品改良がかなり進んだと思うが、
多くの画材というのはすでに洗練され尽くし、これ以上の改良の必要もないのだろう。
それほど売れる商品でもないので、海外で安く作られて技術が陳腐化するようなこともなさそうだ。
今も昔も何十年もの間、同じものづくりが国内で続けられているのだと知って、
なにやらとてもうれしくなった。
画材というのは多くが消耗品だけれど、イーゼルやパレットナイフなど
使い続けていくことが可能なものも多い。
これら道具としての命が長いものを見ていると、おろそかには扱えなくなる。
使い方さえちゃんとしていれば、持ち主よりはきっと長く生きる道具たちなのだ。
メーカーとしては、そんなに長く使われては、商売にならないだろうけれど。。
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COMMENT 2

Sat
2015.09.12
22:43

タブロウ #3h4yWL0g

URL

こんばんは。
私の使っているナイフは川嶋工業社製で「CROSS」というブランドのものです。
一番小さいものを使っていますが、それでも3cmあります。
これより小さいものは他のメーカーも含めて、私も見たことがありません。
ひょっとしたら、購入後にご自分で加工されたのかもしれませんね。
もし本当にこれより小さなサイズのものが必要であれば、私もそうすると思います。
お役に立てず、すいません。

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Sat
2015.09.12
13:50

ペイントナイフ #-

URL

日本製ペイントナイフ

こんにちは。ウエブで探していたらたどり着きました。
実は、たぶんここに載せてある写真と同じメーカーだと推測できるのですが、
オーストラリア人の油絵の先生が昔々オーストラリアで日本製の小さな
ペイントナイフを購入し、同じものを探していますがどこを探しても見つかりません。
私も帰国時に新宿世界堂に行きましたが、最小でも刃の部分が2.5センチ程あり、
探しているものは1.5センチのものです。もし、この極小ペイントナイフ、今でも日本で手に入るようでしたら教えて頂きたいのですが何かご存知でしょうか。
日本製のものは海外では質が良いので求められています!

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