ボリウッド映画でいこう!

 05, 2013 11:59
8mmCamera

今回は画の話ではないけれど、個人的に久々に心が湧き踊った話だったので
非常に長くなるけれど書いておきたい。
映画が好きなことでは人後に落ちない友人の話である。

友人で唯一人、海外で仕事に就いていたやつが帰国して、夕べ再会した。
急な帰国と離職に何ごとかと思ったが、
その理由と今後については予想もしなかった展開にさらに驚く。
・・・・

彼は私の最も古い友人の一人で、小学校での「少年探偵団」時代からのつき合いだ。
彼のおじさんは奈良で最も古かった劇場、のち映画館、現在は閉館してホテルで、
中学高校時代はよく内緒で裏口から入れて映画をタダで見せてもらった。
たまに成人映画もあったりして、悪友達がガラガラの映画館に一列陣取って座っていたのは
今考えれば友人に大きなリスクを負わせていたものだと申し訳なく思う。
劇場は木造で、二階裏の空き部屋ではよく幼い人生論を何時間も話し込んだものだった。
後年奇しくも二人とも東京で暮らすようになった時、
仕事後や休日には彼女をほったらかしにて8mm映画作りに没頭していたこともある。
いつか銀座に名作「ニューシネマパラダイス」のロードショーを見に行った時、
劇場を出た彼は放心して「オレの映画やないか」とつぶやいたのを今も思い出す。
彼の生い立ちや思い出が重なって口から出たのだろう。

大学卒業時にはなんとか映画に関わる仕事に就きたいと彼は考えたが
その頃リバイバルの「ニッポン無責任時代」を見てサラリーマンになろうと決めたと言う。
結局は映像ソフトとそれを見るためのハードを作るメーカーに勤めることになったのだが
今も車に乗る人にはカーナビ、ビデオを見る人にはDVDディスクといった
日本発の文明の利器の恩恵を受けない日はないにもかかわらず、
開発した当のメーカーは没落の憂き目を見ている。
バブル期以降、日本の優良製造業の典型的な行く末だった。
その企業をわが家のように愛した彼も数年前に退社し、
その後アジア各国を飛び回った経験を買われて世界最大の家電メーカーの営業職に就き、
映画「慕情」の舞台、香港へ4年の単身赴任を経ての帰国だった。
脱線して申し訳ないが、今や映画の古典となった「慕情」のヒロイン(で原作者)、
ジェニファー・ジョーンズ演じる実在の女医ハン・スーイン先生は昨年96歳で亡くなった。
昨年まで存命だったことを知っただけでもびっくりのニュースだった。
その香港で「この素晴らしい夜景を一度は見に来て欲しい」と誘ってくれていたものの、
私の困難なサイフ事情がそれを許さず、とうとう行けずじまいだったのが無念だ。

バブル期以降広くアジアを担当し、インドにも行く機会が多かった彼は、
同時に年間制作数一千本超(2003年は長短編合わせて公開数約2000本!)と言われる
インド、ボリウッド映画を片っ端から見ていた。
インド映画を最も見ている日本人の一人だと言うのも嘘ではなさそうだ。
そのなかで、これは日本でも当たるんじゃないかと思った作品が何本かあったと言う。
驚くことに彼は、インドの映画会社に直接コンタクトを取り、
一人で版権管理者に会いに行ったのだ。
インド映画をよく見ていることに驚かれ、さらに
「ここへ来た日本人は、あんたが10年ぶりだよ」とも言われ、
日本の配給会社の怠慢を彼はフンガイしていた。

インド映画といえばかつてはサタジット・レイのシリアスな作品や、
日本でも大ヒットした「ムトゥ 踊るマハラジャ」のようなミュージカルに代表されている。
とくに後者は日本において「すぐに踊り出すおかしなインド映画」という
ステレオタイプの見方を定着させるきっかけになった映画と言われているが、
ミュージカルとはハリウッドのMGM作品でも同様、そういうものである。
ミュージカルを楽しめるかどうかというのはそこが分かれ目になる。
何でもそうだけれど、それを「楽しもう」と思ってみなければ
どんな面白い作品も結局は半分である。

彼と渋谷で再会した夜、これをぜひ見て欲しいというインド映画、
「恋する輪廻 オーム・シャンティオーム」を見た。
ボリウッドパワー炸裂のミュージカルで、
「ハッピーじゃなければエンドじゃない」という台詞そのままの、
見終わって誰もがハッピーになれる作品だった。
この作品を、意外なことに作家の沢木耕太郎さんが新聞映画欄で絶賛していた。
海外の旅の途中で心折れそうな時に見る映画は決まってインド映画であり、
この作品はまさに旅先で見たい、インド映画中のインド映画だとまで言い切っている。
さらには見終わって「映画を見た」という深い充実感に浸れる映画であった、とも。
沢木さんといえば「深夜特急」、そのなかでインドの隣パキスタンでの話、
映画館に入ったところ話がよくわからず、途中退席して出たとたん、
爆弾テロ犯と間違われて警察に取り押さえられるという下りを覚えている人は多いだろう。
「映画を最後まで見ずに出てくる馬鹿はいない、
 もし映画を途中で退席したら、爆弾を仕掛けた犯人と見られることを覚悟せよ」、
というのがエピソードの教訓だった。
それほどインド近辺の国の人は皆、映画が好きなのである。

話はそれたが、その沢木さん絶賛の作品というのが実は
友人の彼が以前日本へ持ってこようとした映画だったというのだ。
持ってくるといってもDVDを個人輸入するという話ではなく、興業としてである(!)。
その時は国内の映画配給会社に話を持ち込んだが、
インド映画というだけでどこも相手にしてもらえなかった。
「そんな映画はどこも上映しないですよ」といわれた作品が今、渋谷で上映されている。
悔しくないと言えば嘘になるが、インド映画はそれだけじゃない。
もちろんすべて見ているわけではないけれど、
千本中1本くらいは日本でも受けそうな映画があるということだ。
ボリウッド好きながら評価はなかなか厳しい。

実は彼は今、かつて見たインド映画のもう一本の「ケッサク」を買い付けて帰国した。
映画買い付けの契約が個人でできるとは初めて知った。
「あたるかどうかはわからんけど、おもろいやろ」
予告編だけを見たが正直なところ、あたるかどうかなど素人にはわかるはずもない。
しかし彼がこんなに大胆なことをするとは思いもしなかった。
彼は背が高いわけでもそれほど男前なわけでもないが、なかなか華のある男だ。
この「華がある」というのが人間けっこう大事だと思っているし、彼には運もある。

彼は50を過ぎてやっと自らの手で映画の仕事に関わることになった。
私も微力ながらポスターのデザインの一枚もして、彼を応援するつもりだ。
大ヒットした暁には、私をインドに連れて行って象に乗せてもらう約束である。
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COMMENT 1

Sun
2014.05.04
13:52

株の勉強 #-

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とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!

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