「大樹」

 12, 2013 01:35
団地の大樹
油彩、F6)

育った団地の風景を記録した。
3歳から23年間暮らし、
その頃は新興住宅地と言われた公団住宅も築50年近くを迎え、
さらには需要が「団地」から「マンション」へと移っていった。
昭和40年代の華、公団住宅が次々に姿を消しているのは今いる東京でも例外ではない。
「団地」という言葉自体も死語に近く、
公団もURなんていうアルファベットの方が通りがよくなった。
JAや民営化される前のJR、NTT、JTしかり、
国営の法人に外国語の名前がつけられている奇妙さは、
そのままこの国のおちょこちょいの幼児性をよく表している。

育った町を出て以来そこを振り返りもしなかったくせに
いつまでもそこに変わらず存在するものと思い込んでいる自分たちの傲慢さ。
気がつけば私の育ったこの団地も、あと一年を残して取り壊される。
なくなるとわかってそわそわし出すのは無責任なものだ。
今はここに父が一人で住んでいる。
建て替えの後、もし父がこの地を離れればこの奈良の地との関係はなくなってしまうのだと
そう思うと、どういうわけかそこに住んでもいない自分の存在の頼りなさを感じてしまう。

ところで、団地の風景は無味乾燥なように思えて、
古くなれば意外や、画のような構図がそこここに現れてくる。
年月を経て劣化した壁、今やレトロともいえる建物や公園のデザイン、
植木と呼ぶには大きく育ちすぎた木々など、
そういうものが現れてやっと町としての落ち着きとしっとり感が出てくる。
欧米ではそうなってきた町に味わいや愛着を感じ、いっそう大事にする感性があるが、
日本ではまた清潔ではあるがなじみの浅い、まっさらの風景へと造り替えてしまう。
「断捨離」などがもてはやされる感性の国らしい。
50年後の建て替えを前提とする都市計画など、計画と言えるのだろうか。
かつて20代半ばまで住んだこの団地はあとわずかでなくなってしまうというのに、
水道や配水管、そして植木など植栽の手入れは怠りなく続けられている。
寂れる団地と、今を盛りとモリモリ葉を茂らせる木々のコントラストがまぶしい。
今も住む住人のためにはもちろんメンテは必要だけれど、
その本質の不毛さといったらない。

ここでふたたび暮らし、一年を通じて風景の移り変わりを見つめてみたいと夢想するが
もうそれは(建て替えがなくても)かなわぬ事だ。
人は本来、思い入れのある場所には戻ってくるべきではないのだろう。
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Tag:油彩 Landscape Paysage 風景画

COMMENT 4

Wed
2013.05.15
10:44

タブロウ #3h4yWL0g

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No title

メグさん、おはようございます。

団地とマンションの違いは敷居の低さでしょうか。
団地に住んでいた頃、鍵をかけたことがほとんどありませんでした。
時代ということもあるでしょうね。
子供があふれていたあの風景は平和そのものです。

団地の興味深い写真のあるサイト、ありがとうございました。

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Tue
2013.05.14
14:22

魔女メグ #FhqeNpQ.

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月の下の子供

記事を読んで、思い出すブログがあります。
もう稼動していないブログなのですが、こちらのAuthorさんの感性がなんだか好きで、覗きます。
そこに団地も出てくるし、昔の小学校とか、、、。
陶芸家のルーシーリーは こちらで知りました。
もう生きていないブログ、ちょっと寂しい。

http://chaild.exblog.jp/7589065/
懐かしさだけでない、美しさもありますね。

Edit | Reply | 
Tue
2013.05.14
00:42

タブロウ #3h4yWL0g

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ストリートビューは保存すべき

のまどさん、こんばんは。

私にとって皆さんご存じの奈良は、
同じように校外学習で行く町です。
奈良公園や奥山には大木がにょきにょき生えていましたが
生活圏には雑木林しかありませんでした。
それが町を離れているうち、周囲に生えていた植木がこんなに大きな木に!
と驚くような大木に育っています。
その木を建物を含め、更地にすることが決まっているのですから
なんとも不毛な気がします。
古都は(観光)資源にならない古さには目もくれません。

思うんですが、ストリートビューは保存していくべきですね。
消えてなくなった町をいつでもどこででも歩き回れるというのは
考えてみたらすごいことです。

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Mon
2013.05.13
07:36

のまど #-

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No title

タブロウさん、こんにちは。
私も同じ事を時々夢想します。
もう一度生まれ育った故郷に住むことは在るんだろうか。。

懐かしくて住んでた場所をストリートビューで探しても、昔の面影は少なくなりつつありますね。

幼稚園の横にあった赤煉瓦の塀とレンガの煙突があった造り酒屋は殺風景なトタンの薬の量販店に変わっていました。

画の中の太陽を一杯浴びた大木が印象的です。
田舎に帰省して見覚えのある樹木に再開した懐かしさと嬉しさが画から滲み出ています。

初めてデートをした神社にあった寿命千年の大楠。
お前も元気だったか~と撫でながら木に話しかけてる自分が居たりします。
誰かが見たら変なオジサンかも知れません^^;。


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