小路の底

 10, 2013 01:11
南馬込小路(F6、油彩)

仕事の合間合間に宇野マサシさんの自伝「僕の風景」を再読して、
添えられている油絵の風景画とともに、深く感じ入るところが多かった。
宇野さんは日本の風景のリアリズムとして長谷川利行を頂点にあげられている。
利行はフォービズムなどではなく、
日本風景のリアリズムなのだと言っているところが大きく頷ける。
宇野さんの目指す日本の風景というのがこういうことだったかと
あらためて作品を見ると、そのすばらしさにうなってしまった。
それは何ともうれしい経験だった。
絵を見たり描いたりしてきて
今まで見えていなかった部分が見えてくることほどうれしいことはない。

そんなことがあって、私もまた風景を探しに、先週末自転車で近所を走り回った。
「文士村」と言われるくらいだから、まだ見ぬ気の利いた町並みが残っているかと思ったが
それはあてがはずれた。
保存された家屋は、まるで縛られた老人だ。
それで路地裏を描いてみたら、これは湿気のこもった陰気な絵になってしまった。

友人で奈良の古い村か町に住んでいるのがいて、
彼の家屋は築200年、斜め隣の家はなんと築500年だという。
30年ほど前までは、町まるごと江戸だったそうだ。
500年の家は重要文化財に指定された。
指定されたからと言って補助が出るわけでもなく、
修理一つするにも今度は国に伺いを立てねばらならなくなった不自由を聞いて
友人宅は何年か前、あわててその築200年の家を建て替えてしまった。
「文化財に指定されたら、えらいこっちゃ」
外から見ればもったいない話だと思うが、
住んでいるものには人知れぬ不自由と苦労があるものらしい。
それにしてもこういう残すべき文化財は、
国は数えるほどになってからしかちゃんとしたお金を出さない。
そうなってからでは縛られた老人の姿にしかならない。
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COMMENT 4

Thu
2013.06.13
01:25

タブロウ #3h4yWL0g

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No title

のまどさん、こんばんは。
自転車は、セガレが新しいのに乗って、やっと私にお下がりが来ました。
それで走り回って構図を探したりしていますが、いつもやっと見つけたところで夕暮れです。
それで写真か、それにせいぜいスケッチを加えて週末は終わり、
それをもとに平日の深夜に作画する毎日です。
後輩や他人にはとにかく実物を見て描くようアドバイスしていますが、
私自身は今現在はまず無理です。
外で毎日描く夢もありますが、私は現在自分に可能な
自分なりの制作方法をとって描き続けていくつもりです。
それでも毎日描かないではいられないのは、私の方がよほどせっかちなのでしょう。
次はこの階段を上って左に行ったところの、高台の建物を描いています。

それにしてもフランスからこちらの近所にGoogle散歩とは、すごい時代です。

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Wed
2013.06.12
19:19

のまど #-

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No title

先日、自転車で描きに行かれたと聴き嬉しくなりました。
最近は忙しくて乗れませんが、帰国した時も家内の実家の埼玉から銀座まで走り画廊巡りもした事があります。

本当は徒歩が一番濃密なその場所との過ごし方なのでしょうが、、セッカチな私には自転車位のスピードが向いてるみたいです。

『馬込文士村』をサイトで調べてグーグルで少し散歩してみました、坂も少しあって都心に近いのにノンビリとした場所みたいですねぇ。

小路の底と言う表現が秀逸だと思います。
その底から見上げるタブロウさんの目線が水面下から空を見上げる魚みたいで、悲しさを感じました。

安全な場所から多くを語る人は多いですが、自分もその場所に寄り添ってる、そんな気がしました。

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Tue
2013.06.11
00:29

タブロウ #3h4yWL0g

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No title

しょうちゃん、こんばんは。
少しご無沙汰してしまいました。
さっそくコメントを頂いてありがとうございます。
しょうちゃん兄のコメントには、はっとさせられることが多いです。

与堂さんのサイトは、毎日拝見しています。
短時間にあれだけ深い味わいのある作品が描ければ、
外出するのはさぞ楽しいだろうと、いつも思って拝見しています。
こう言って正しいかどうかわかりませんが、軒先のゆらぎに
最も与堂さんの魅力がじわっと出ている気がします。

私は筆を持つと綿密に描き込んで、かっちり形をとってしまうので
この画もそうですが9割方ナイフだけで描いているんです。
以前はナイフで描いたタッチが好きではなかったのですが、
今はまっすぐな線も描けない、不自由なくらいが丁度いいと思って使っています。
もとはといえば、パステルのタッチを油彩に活かせないかと始めたことです。
いろいろやっているうち思い通りの画面が表せられたら、
今度は筆で再現できるようにやっていくつもりです。

描いたこの場所で唯一気になっていたのは、
人気(ひとけ)が希薄なことでした。
今はもう一点、この日見つけたアパートを描いていますが
今度はもっと人の気配を感じる場所を探すつもりです。
ひとりで飲みに行くことは全くないので、盛り場を描けないのが痛いですね。

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Mon
2013.06.10
21:25

しょうちゃん #bGf9qjkw

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No title

タブロウさん こんばんわ
この路地の絵はかなり厳格なデッサンのできる人が描かないと この路地のもの悲しさが伝わってきませんね
先日 宇野さんのゴールデン街の絵を見たときも つくづくそう思いましたし今日タブロウさんの絵を拝見してまた再認識しました 
言葉は悪いですが何の変哲もない汚らしい建物を安易な効果なしで画学生の様な構成で淡々と描いていく 基礎を十分に鍛錬された者にしか出来ない技ですね
小生の好きな与堂さんもそんな所があって何も足さず何も引かずただ淡々と結局そのような人の絵は見る者の想像力を限りなくかきたてます
何か感じたのですが 小生の眼力 知識でほこれぐらいの事しか書けません

ではまた

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