吉祥寺で本を買う

 18, 2013 12:12
吉祥寺は私が東京に来て最初に働いた仕事場のあった街だ。
自分の東京での原風景らしきものがあるかも知れない、と思って出かけてみた。

その頃は若者が住みたい街でも何でもなく、東京の田舎町だった。
ところが久しぶりに出かけた街は自分の記憶とは全く違う街になっていて、
ルーツどころではなくなっていた。

それでもせっかくやってきたのだからとぶらぶらしていたら、
この街は意外に古本屋が多くなっていた。
昔からある店が3軒、最近増えた新感覚の古本屋がさらに三軒、
探せばもっとあるにちがいない。
うれしいことに最初に入った南口の店で、長く探していた本を2冊も見つけた。
熊谷守一の作品ではなくて写真集、
「獨楽」(藤森 武撮影、講談社刊)と
「長谷川利行 未発表作品集」(昭和53年刊)だ。
ネットなどでたまに見ることがあっても、結構高い。
熊谷守一の写真集は廉価版が新刊で売られているが、それでもなかなか手が出なかった。
古本で買っても著者にはお金が行かないので、
著者が存命の場合はなるべく新刊で買うように心がけているのだけれど
実物を古本屋で、しかもそこそこ安価で見つければ素通りするのはなかなか難しい。

20136018-1



熊谷守一は孤高の仙人のように言われている。
ただ一人、長谷川利行のことは終生評価していて、
この本の中でも二回も利行の事に触れている。
「利行のような絵描きは今はいませんネ」
「私はゴッホより長谷川利行の方が好きです」
偶然この日に見つけた本が、熊谷守一と利行の二人の本だったことに縁を感じる。

20130618-3なんて美しい顔なのだろうか。
20130618-4熊谷守一の宝石のような日常がぎっしり。
写真家の藤森武は土門拳の元にいたらしく、ライティングに師のそれを感じられる。
写真家はこの後、新たな被写体探しには苦労したんじゃないだろうか。



そして、こんなことも二度言っている。
「絵は貧しい時代ほどいい絵が生まれます」
「絵も音楽も貧しい時ほど必要で またそういう時ほどいい絵が生まれ
 いい音楽が生まれるようです」

いい絵描きが貧しいのではなく、
貧しい時代にいい絵が生まれているというのは、似ているようでまったく違う。
こういう言葉に思わず立ち止まってしまう。
さらに加えるなら、「若い」こともあるかと思う。
若い絵描きの人はこういう時代だからこそ
いい絵を描いて欲しいと思う。
対して社会はこれから、いい画を求めるやさしく豊かな心を、はたして持てるだろうか。
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