ジブリ作品のルーツ「ホルスの大冒険」

 14, 2013 23:43
先日TVでスタジオジブリ作品「天空の城ラピュタ」をやっていて
これに限らずどのジブリ作品も子どもたちは毎度夢中で見ている。
我々の世代にはナウシカでさえ20代になってからの作品であり、
子供時代に見ることができなかったせいか、ジブリ作品はどうもなじみにくい。
ナゼかと考えたら、どの作品も既視感があることに気づいた。
アメリカのピクサー作品は大人が見てもうなるものが多いが、
私が今まで見た中で一番印象に残っているアニメ作品は
なんといっても東映の「ホルスの大冒険」だ。
小学校に入ったばかりの年(1968年)にリアルタイムで見ていて
印象的な主題歌は今も口ずさむことが出来る。
アイヌの民という設定が今もって新鮮で、北の国の神話にこれほどふさわしい所もない。
ヒロインの民族衣装に何とも言えない温かな魅力を感じていたのを思い出す。
話は早々に脱線するけれど、熊谷守一が若き日(だから今から百年ほど前のこと)、
樺太調査隊員としてまだ原初の生活をしていた頃のこの日本の先住民たちの生活を見て
「もし神さまが居るとしたら、こういう姿ではないか」と思ったそうである。
熊谷守一の樺太行の話は自伝にも出ていて読むと面白い。

話を戻して、この作品も実は若き高畑勲と宮崎駿が作ったルーツ的作品であり、
つまり親子二代にわたってジブリ(宮崎・高畑)作品で育ったことにもなるわけだ。
当時の子どもたちには受けず、興行的には大失敗だったらしいが、私は大好きだった。
作中の各キャラクターは複数人によるデザインになっているけれど、
ルパン3世などで有名な大塚康生がメインになっておおいに手腕を発揮したと思われる。
その後のジブリ作品に至るキャラの原型はおおむねここに見ることができる。
デザインだけでなく、主なキャラ設定、
女の子、男の子のカップル主人公、妖怪(妖精)みたいなもの、巨人(巨大生物)、
一致団結して戦う村人(女性が強い)、ヒロインに寄り添う小さな相棒などなど
多くがその後も踏襲され、ジブリ作品の既視感の理由はここにある。
本作が高畑監督の長編第一作だったことにも驚くが
宮崎駿のアシスト無しにあり得なかった作品でもある。
3年越しの完成の試写会を見て、作画に関わった天才大塚康生は
単なるアニメーターとしてしか関わらなかった後悔に男泣きしたそうだ。


今から20年ほど前、弟の知人の関係で、西荻窪である人に会った。
話しているうちにその人は元アニメーターで、高畑、宮崎両氏の元で
「ホルス」の全セル画15万枚を描き上げた28人のうちの一人だったことがわかった。
伝説的な作品に関わったスタッフにもかかわらずその後は経済的事情から作画を離れ、
現在はまったく別の仕事をしていると語る寂しげな様子が後々まで印象に残った。
この作品は完全主義の高畑監督が予算を無視して時間と制作費をかけすぎ、
一時制作の中断を余儀なくされた経緯がある。
スタッフの人手が不足しているTVの仕事に引っ張られたからだといわれているが
実際はそれ以外に会社側との労働争議があったということだ。
アニメーターの過酷な仕事環境は今に至るもよく知られている。
作品中で村人が力を合わせて悪魔と戦ったり、
悪魔に通じている人物にそそのかされて裏切る村長がいたりという設定には
当時のそういう現実的な事情が如実に反映されているということであった。
それも子どもには関係のないことで、私はヒロインのヒルダにでれっとしていた。
ちなみにヒロインの声優は、若き市原悦子である。
まったく関係ないが私は過去に一度、代々木八幡駅の踏切の所で
なにやら考え事をしながら歩く宮崎監督とすれ違ったことがある。

宮崎駿や高畑勲らの人間観、人生観、
弱者救済の心と自分の命よりも大事なものがある、という価値観、
善悪を判断する視点は今も変わらず一貫している。
アシスタントして宮崎の元で育った庵野秀明氏は私と同世代だけれど
それ以下の世代に後継者は育っているのだろうか。
宮崎駿は先日の対談番組で、日本のアニメはとくに少子化という経済的背景から
やがて遠くない未来、必然的に廃れるだろうと語っていた。
ジブリ作品の現在の隆盛を思えばにわかには信じられない話だけれど、
よく聞いてみればさもありなんという感じがする。
ひょっとしたら後継者は日本以外の国で生まれ、
もっと子どものたくさんいる国で引き継がれていくことになるのかも知れない。

ホルスビデオ
このVHSビデオは10年以上前、廃業したビデオ屋の整理品として売られていたもの。
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