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20代の頃

23年前の旅と、友人との再会

もうすぐモスクワ

話はひと月ほど前のこと。
3月はじめに古い友人と会った。
今から23年前に私がはじめて海外への旅に出たとき、
横浜港からナホトカ行きの船に乗り、モスクワ行きのシベリア鉄道で同乗したうちの4人だった。
その時、職業も出身地もバラバラにもかかわらず、列車内のみんなは妙に気が合った。
私は30歳を前にして初めての海外への旅であり、
見るもの聞くものすべてが珍しく、毎日が新鮮な驚きの連続だった。
当時のソ連は1ヶ月後の崩壊を前に物資が極端に不足しており、
デパートのショーケースには、とくにモスクワではほとんど商品が並んでいなかった。
(極東付近では意外に何でもあったが)
列車の食堂車に食事があるのは決められた時間だけ。
卵や肉は途中駅に停車するたび食堂車の裏から売りさばかれ、
モスクワに着く頃にはスープに具はなく、
駅で売られているピロシキの中身はじゃがいもだけだった。

ヨーロッパを自転車で回るつもりだったK君は帰国後、
「自転車はみなさんと別れてすぐ盗まれました」と話してくれた。
彼はその後あっさりと自転車の旅を諦め、
1年近く放浪した旅先から、ゾウガメの背に乗った写真を送ってきた。

IT技術者のY君は、列車に同乗していたオーストリア人二人に、今もフンガイしている。
Y君含む彼らは列車内で仲良くなったロシア人のおじさんに
ビンに入ったハチミツのおすそ分けを勧められた。
その様子から、おじさんが相当大事にしているのは明らかだった。
「なめていいよ」と言われてスプーンにもらった一さじは、驚くほどおいしかったそうだ。
ところが同じように勧められたオーストリア人の若者二人は、
そのハチミツをおじさんが席を外している間に、ひとビン全部なめてしまったのである。
そのあとどうなったかわからないが、あの二人は許せないと、
Y君は今も(吹きだしながら)訴えるのである。

帰国後すぐに一度はみんなで再会したが、あとは茫々23年間の月日が流れてしまった。
きっかけとなったのは、岡山で和菓子職人をしていたS君が2月末に電話をかけてきてくれたこと。
それまで年賀状のやりとりだけは続けていたものの、
「今年こそ会いましょう」と言いながら、長きにわたって会うことの無かった4人が
今回はあっという間に日時と場所を決め、再会となった。
やはり実際に声を聞いて話すことは大事だ。

懐かしい顔はそれなりに時間の経過を刻んでいたものの、
あの日と変わらぬ冗談を言い合い、23年の時間を越えて笑い合った。
人間というのは一生を通じて、それほど変わるものではない。
宴の話題は現在のことよりやはり当時の旅、
とくにバイカル湖のあるイルクーツクで別れて以後のことに花が咲いた。
4人の中では比較的旅が短かった私が、どういうわけか一番しゃべっていたようだ。
旅は楽しく刺激に満ちた、一生に何度もない大切な時間だったことに意見は一致する。
私が当時、「20年後に再会したときには、みんなでローカル列車に乗って旅をしよう」
と話したことがあったらしい。
すっかり忘れていたが、覚えてくれていたことが何よりうれしい。
いつか実現できればそれもまた、忘れられない楽しい旅になりそうだ。

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