狐に化かされる

 03, 2014 16:57
先週高校時代のバイト先のおっちゃんとその家族のことを思い出しながら、
狐や狸に化かされる、といった話のことを考えてみた。
ちょっとネットで検索すると、思いのほかたくさんの体験談が出てくる。
多いのが
「何度歩いても同じところに出てしまう」
「どこか居心地のいいところにいると思っていたら、森の中(全く別の場所)だった」
といった話。
中には黒澤明監督の「夢」に出てくる「狐の嫁入り」とそっくりの情景を
実際に目撃したことがある話も複数あった。
「ばかな」と切って捨てることは簡単で、
私も読んでいて「それはちょっと狐には関係ないだろうなぁ」と思う話もある。
私自身の体験はないものの、身近な人から聞いた経験談として忘れられない話がある。
一つはおっちゃんの子どもたちの話、もう一つは当時まだ若かった小学校時代の先生の話だ。
どちらも嘘をつくような人でもなければ、その必要もなかった。

子どもたちのうち姉は当時小学校の4年生くらい、弟は2年生くらいだったろうか。
夏休み中私はほとんどの日々をそこでバイトしていた。
その日、近く(北田原)の村では祭りがあり、子どもたちはとても行きたがっていたのだけれど
おっちゃんたちは週末の仕事に疲れてしまい、替わって私がふたりを連れて行くことになった。
店から盆踊りの広場まで1km弱の道のり、街灯のない国道を歩かねばならないが
家から出るといたっておとなしいふたりを連れて行くのに手こずることはない。
小さな祭り会場には踊り手が30人ほど、夜店は二軒しかなく、夜空にはコウモリが飛んでいた。
村の祭りとはこんなにも慎ましく、行き帰りの道は暗く遠いものかと思った記憶がある。
ともあれ、その日は子どもたちを連れて無事帰宅した。

何日かしてふたたびバイトに顔を出した日、
仕事が終わってから夕食時におっちゃんとおばちゃんから、翌日の話を聞いた。
私がいないので、今度はおばちゃんが子どもたちを祭りに連れて行った。
河内音頭を踊っての帰り道、国道163号線を歩いていたときのことだ。
途中、元はホテルかドライブインだったらしい、
外国の城を模した廃屋というか、城だから廃墟(?)が左手にあった。
その建物の横を通りかかったときのこと、
前を歩いていた子どもたちふたりが突然国道の路肩を外れて左へ折れ、
その廃墟の開きっぱなしの入り口へ、一度も母親の方を振り返ることなく
まるで吸い込まれるように暗闇に入っていったという。
驚いて後を追ったが、入り口から呼べど叫べど返事はなく、
かといって暗い夜道のこと、本当にそこから中へ入ったのかどうか、確証もない。
建物の周囲を探したり入り口から名前を叫んだりするうちに30分かそれ以上の時間が過ぎた。
すると、中から子どもたちが入ったときと同じように手をつないで出てきた。
どこでどうしていたのかと問うも返事はせず、とにかく胸をなで下ろして店に連れて帰ってきた。
不思議なのは翌日、
いくら聞いても子どもたちはあの廃墟へ入っていったことをまるで覚えていないという。
ただでさえ小さな子どもたちにとっては不気味な場所である。
真っ暗な建物の中で小一時間もどうやって過ごしていたのだろうか。
おばちゃんとおっちゃんはこともなげに
「狐に化かされたんや」と言った。
廃墟は「キャッスル163」という名で、その後取り壊されて今はない。

そういうことを思い出して、この画を描いた。
今は大人になった子どもたちへ「子どもの頃の夏の思い出」のつもりで描いたが、
こんな怪談じみた画は受け取りたくはないだろうなぁ。
狐に化かされる
(P6、油彩
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