師の肖像(F6)

 26, 2011 14:39
師の肖像

私の師にあたる人物です。
これで私の今、描いておかなければ、という人物の肖像画はそろった。

私の周りの人に聞くと「恩師」というものをもたなかった、
という人が多いのに驚く。

私には師、あるいは恩師といえる人がいままでに少なくとも3人いた。
その人たちの存在によって、私のもともと広くもない世界が
すこし豊かになった、くらいは言えると思う。
・・・・
最初は小学校の担任のK先生、
この先生は当時、まだまだ海外旅行が一般的ではなかった時代に
TVのクイズ番組に出て稼いだ賞金で、
世界中を旅行して歩いた写真を見せ、話を聞かせてくれた。
スイスだったかフランスだったかの教育者の女性と
アルプスにてスキーで山越えを楽しむ、という図はまるで別世界の話だった。
もともと実家は裕福で、学校には当時奈良では手に入らなかったはずの
イタリア車や独車を駆って大田舎の柳生の里から1時間以上を掛けて通勤してきていた。
専門は算数と音楽、というのも異色で、ピアノも上手かった記憶がある。
鈴鹿サーキットに個人でレースカーを所有しており
ムシャクシャする時はサーキットをぶっとばして発散していた。
奈良にいた自分たちには映画かマンガのような世界の住人であり、
「世界」というものの感覚を、最初に吹き込んでくれた人だった。
今も健在で奈良の教育委員長の重責をこなしておられるはずである。

次は大阪、総合美術研究所(絵の研究所)の竹中保先生、
非常に優れた美術教育者であり、指導を受けた生徒は
わずかな期間でデッサン、色彩、立体構成力を
飛躍的に向上させることができるというので
当時、関西の芸大志望者では知らぬものはいなかった。
一時、京都芸大の半分以上がこの研究所の卒業生だった。
ほとんどが1~2年で希望の大学に進んでいく生徒の中で
5年も在籍した私を、授業料も取らずにおいてくださった。
絵の基礎技術をたたき込んでくださっただけでなく、
重要なのは描き方ではない、ものの見方なのだ、ということを教えられた。
私の数少ない絵画に関係する友人は、ここで知り合ったやつらだ。
彼らも研究所でたタダ飯を食らう劣等生であったが、
現在美術界では他の優等生だった卒業生をしのぎ、堂々たる活躍をしている。

そしてこのU氏。
かつて広告の世界で活躍されたが30代半ばで引退。
息子と毎日遊ぶためだった。
わき出す泉のように稼いだ金がつきるまで数年間、一切働かず、
息子さんと毎日潮干狩りなんかをしてすごした。
私が出会ったのは東急ハンズの仕事で、氏が体調を崩していた時に手伝ったのが縁だったが
以後そこを退社するまで3年弱、ついにデザインや仕事を教えてもらうことは一度もなかった。
ただ、生き方はどうだ、世の中の虚飾に気付け、
なにが本当で、なにが嘘なのか、いい仕事とは何か、
自分たちの仕事は世の中になくてもかまわない虚業であり、決して驕るな、
本当に変わらない価値、真実に一歩でも近づくことが生きること、
などということをコップ酒片手にずっと聞かされてきた。
難解な思考に没頭すると、卒倒するまで考え続ける集中力を持ち
膨大な知識は多岐にわたっていて驚くばかりだが
学校は中学、一説では小学校までしか出ていない。

本当に世を見通す人というのは井の中にいても目は曇らないもので
自室にこもっていながらいつどんな問いを投げかけても、ブレのない答えが返ってくる。
当時の氏の年齢は今の私とほぼ同じはずだが、今の私にああいう答えは出せない。
人というのは若い時から年齢を経て、そう変わるものではないことを
今も氏と話していて痛感するのである。


ちなみにいい仕事とは何か、
一つの答えとしてこう言われた。
たとえば今やっているようなデザインの仕事なら、
この仕事をひとりでも多くの人間が
「これは自分がやった仕事です」と言える仕事。
いい仕事というのは制作者、客、営業、経営者、皆が自分がやったという。
「これは自分が関わった仕事です」とみんなが言えば言うほどいい仕事だ。
一方大勢が関わったにもかかわらず、「あれは自分には関係のない仕事です」
などと皆が言うのは、仕事としてこれほど情けないことはない、という。
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Tag:油彩 油絵 肖像画 Portrait

COMMENT 2

Wed
2011.01.26
22:46

タブロウ #-

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No title

hananoiroさん、こんばんは。

師のところへは年に一度、大掃除の窓ふきにいっています。
今回その時に、「実は絵を描き始めましたので」と一枚写真を撮らせてもらって
それを元に描きました。
ポーズをとってもらうのは大変ですから。

まだ描き始めたばかりで絵になっていませんから、
これを額に入れて届けて、
できればこれから年に一度、新しいものと入れ替えるつもりです。
厳しい方なのでなんと批評されるかわかりませんが、
それも含めて、描くというのは楽しいですね。

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Wed
2011.01.26
22:21

hananoiro #-

URL

No title

こんばんは☆
尊敬する恩師を描かれるのは、勇気と気合いが要ったのではないのでしょうか。。
人物画はモデルになってもらって、描かれるのですか?

私にも私のような素人に絵の世界を教えてくれた恩師、今、日本画を教えていただいている
師がいます。それぞれの出会いにいつも感謝をしています。

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