天野祐吉さんのコラム30年の輝き

 13, 2014 02:01
CM天気図

朝日新聞が死に体である。
沈みそうな船はふたたび浮かび上がれるだろうか。

もうすぐ天野祐吉さんが亡くなって一年、
天野さんは朝日に「CM天気図」というコラムを連載していた。
その30年間にわたる連載をまとめたのが「天野祐吉の CM天気図 傑作選」だ。
本屋で発刊時には見つけられず(新書だと思っていた)、そのうち忘れてしまって早一年、
今日、古本屋で見つけて「これだったか」と購入した(単行本だった)。
朝日が沈んでいくのを目の当たりにした日に見つけたのも何かの縁か。
ちょっと読んでみたが、期待以上の上質のコラムにうなってしまう。

前書きに橋本治がこう書いている。
 この本を読み返すと、ページの間から三十年の時代がパラパラ漫画のように見えてくる。
 「CM天気図」と言って、実は「時代の天気図」で、
 大人の天野さんは、うっかりと人に突きつけるようなことを言わない。
 それを言う時には、慎重なフィルターをかける。
 フィルターの「軽さ」はあっても、中はそんなに軽くない。

「CM天気図」に限らず、他のエッセイやTVでのコメントをとっても、
日本には少ない、大人のことばと批評を、にっこりとさせながら唸らせる人だった。
さて、今日買った「天野祐吉の CM天気図 傑作選」
最初のコラムはこんな感じだ。
(時代だなぁ)違いがわかる男、について書いている。(以下抜粋)


いまの世の中は「違いがわかる男」じゃないとバカにされる。
その点、CMに出てくる男はみんな「違いのわかる男」たちである。
しかしそれが強調されるということは、それだけ「違いのわかる男」が少ないということである。
それが証拠に「違いがわかる女」という言葉はあまり聞かない。
「ラーマ奥様インタビュー」はなぜ男に味をきかないのか。
かんたんな話で、男に聞けば微妙な違いがわからず、
「ほかのマーガリンと変わらないねェ」などと言ってしまいかねないからである。

この話に私はびっくりであった。気がつかなかった。そして笑った。
このCMのせいか、違いがわかるのは男だと、今の今までそう思ってしまっていた。
男というのは、違いと聞くと性能や品質という「いい悪い」のモノサシだと思ってしまう。
女は「いい悪い」のほかに、「好き嫌い」のモノサシを使って計るから、
似たり寄ったりの商品の間にも、レキゼンとした違いを発見したりするのだと。

それを聞いたなら、「ほら見なさい、女は違いがわかるのよ」と女性は得意になるのだろう。
さて男はといえば、その満足そうな横顔を見て、「男でよかったなぁ」と
そう思えるのが「違いのわかる男」である。
書かれたのが1984年、いまから30年前とは思えない鮮度のコラムだ。
沈みかけた船にドリルで穴を開けるようなコラムとは天地の差がある。
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COMMENT 2

Tue
2014.09.16
00:10

タブロウ #3h4yWL0g

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KENさん、こんばんは。
ありがとうございます。
今続きを少しずつ読み進めていますが、どれもおもしろいですよ。
語り口は軽いのに、グサリときます。
近いうちに「その2」を追加します。

個展、もう何度もやっていらっしゃるので、
すでに季節のものになっているのかもしれませんね。
「誕生日に」というのもいい話です。
盛況になりますように。

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Mon
2014.09.15
22:37

KEN #T9f8X956

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おもしろそうな本ですね。

いつもブログ楽しませてもらっています。感謝!
この文を読ませてもらっただけで、読んでみたくなる本ですね。
違いが判らないままよい年になりました(^^;)。

 P/S 誕生日記念個展への応援メッセージありがとうございました。

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