奈良の町を歩く

 07, 2015 01:24
南円堂裏通り(ペン、色鉛筆)

ふだんは観光客であふれる奈良の町も、
元旦を前にした大晦日前になると歩く人も、地元住民が多くなる。
奈良を歩くならばこういう時期、あるいは一年を通して早朝がいいと思う。

以前、夜行バスで一人帰省していた頃は、早朝奈良に着いた後、
奈良公園を歩いてしばらく時間をつぶすのが常だった。
まだ寝ぼけている鹿は昼間だったら誰彼なくせんべいをねだりにしつこくつきまとうのに、
その時間はそばを歩く私を気にもせず、うっそうと影を落とす巨大な樹木の下、
日の当たる芝のうえでじっとしている姿はいっそ神々しい。
そういう風景を前にして静かな感慨にひたり、なかなか自宅へ足を向けられないことも多かった。
当時まだ小さく暗かった国宝館は暖房もなく、冬の館内に朝のうちは一人の観覧者もおらず、
阿修羅像を見て意外に小さいのだなと思った。
明治か江戸か、いったいいつからそこにあるのか見当もつかない崩れ落ちた壁が、
そうだ、大和を撮った入江泰吉の写真にあるような土壁が、
町の所々にあたりまえのように見えていたのは、ついこないだのことなのだ。
シルクロード博以降、町中は「きれいに」され、
今はどこにあったのかさえわからない。
もし残っているとしたら、手厚く「保存」されているものだろう。
長年住んでいたにもかかわらず、そういう奈良が持つ時の分厚さを知ったのは、
残念なことに遠く離れて暮らした後のことだった。

この日は、建て直した公団住宅に越してきた父の部屋を掃除した。
建物とその室内の真新しさに比べ、
父がそのまま持ってきた家具や電気製品のいたみや汚れがやけに不釣り合いだ。
本当に古くて良いものはアンティークになるが、
昭和後半に大量生産されたものはただ劣化あるのみなのが悲しい。

ヤニで汚れたエアコンをともかくも白くして、午後遅めに奈良公園へ電車に乗って出かけた。
「らしい」場所を描くのは避けているのに、
ここ「南円堂裏通り」は、いつか写生してみたいと思っていた場所だ。
時期と時と天気のせいか行き交う人はまばらで、
二年前の初夏にはうっそうとしていた木々も、今は葉が落ちて空が少し抜けている。
しかし染まり始めた空は、着彩をはじめたところで雨がぱらつきはじめた。
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Tag:Landscape Paysage 風景画

COMMENT 2

Thu
2015.01.08
20:05

タブロウ #3h4yWL0g

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KENさん、こんばんは。
こちらこそよろしくお願いいたします。

このあたりで少年時代を過ごされましたか。
かなり貴重な風景をご覧になっているのではないでしょうか。
私の使っている色鉛筆は使いやすいのですが水彩タイプですので、
ちょっとの雨や雪でとんでもないシミがついてしまうのが玉にキズです。
あとから色を重ねてごまかしましたが、まだ真ん中にちょっと黒いシミが見えますね。

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Thu
2015.01.08
09:09

KEN #T9f8X956

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南円堂横の懐かしい風景

タブロウさん、おめでとうございます。
今年もブログ楽しみにしています。
ふるさと奈良、このあたり南円堂裏から三重塔あたりは家の近くで子供の頃の遊び場でした。タブロウさんの色鉛筆画、何気ない公園の風景によくもマッチしていますね。素敵な雰囲気を楽しませてもらい感謝です。本年もどうぞよろしくお願いします。

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