年の瀬「東大寺旧境内」

 10, 2015 12:16
東大寺旧境内(ペン、色鉛筆)

南円堂から一日おいて、ふたたび奈良の町中を歩く。
前日は以前描いた、上京前にバイトしていた中華料理屋のおっちゃんと、
子どもたちの画の二枚を、本人に渡してきた。
10年ぶりに近い再会で、あたりまえだけれどおっちゃんも歳をとっていた。

(先日アップした)一本杉越しの三笠山を描いた後、三笠山方向へ。
ちょうど昼どき、NHK奈良の裏あたりを歩いていて
壁に名前が右書きになっているアパートの前を通りかかった。
「これはずいぶん古いな」と思って見ていたら、
1階の軒に色あせた「カレーライス」ののれんが風に揺れている店があるのが目に入った。
建物が古い上に何軒かの店子が並ぶ中で、現在営業しているのはそこだけのようだ。
ひと気のまばらな通り、おそるおそるドアを押してみると、10ほどある席が意外にも満席。
中から「座れるよぉ、お兄ちゃん」の声がかかり、順に詰めてもらって私一人分の席が空いた。
近所の常連さんのようだったが、ドリンク以外のメニュー、晦日の今日はカレーのみ。
客同士の話を聞くともなく聞いていると、俳優の加藤雅也のことを話している。
加藤雅也は奈良出身、イッセイミヤケのモデルから俳優になった。
奈良高校出身の秀才で陸上のインターハイにも出た運動神経の持ち主でもある、
好きな監督である阪本順治作品に出ていたのでそれくらいの知識はあったが、
このあたりが地元だったとは知らなかった。
さらに出てきたカレーの盛りを見て仰天していると、
隣に座っていたおばちゃんが「おいしいから全部食べられるで」と
私の肩に手を置き声をかけてくる。
この「私の肩に手を置き」話しかける人なつこさは長く触れたことのなかった感覚だ。
とんでもない大盛り、それにヤクルト付きというのがなんとも家庭的だ。
普通の胃袋サイズの持ち主は「小盛りで」と注文しなくてはいけない。
(ただし値段は同じ600円)
tagawa_curry

物腰の柔らかいご主人によると、ここでもう50年営業しているそうだ。
その頃は奈良のお水取りの行事も、
見に来ているのは近所の人だけというようなローカルなものだったと言われる。
そういえば私も東京に来る前、一度大晦日の年越しの時間帯に、
友人と混雑する春日大社を避けて東大寺へ初詣に来たことがあったが
かがり火をたき、入口を開放されている堂内は無人で深閑としており、
大仏さんと対面しているのは私たちだけという、今となっては不思議な体験をした。
主人によると、今では東大寺も押すな押すなの初詣客が押し寄せる状況らしい。

カレーはおばちゃんの言うように肉が軟らかくて味もよく、残さず食べてしまった。
ふだんの昼時はNHKや県庁職員で賑わい、繁盛しているらしい。

そこから東大寺に向かって歩いていくと、「東大寺旧境内」の立て札が現れる。
高校時代の同級生は東大寺境内に住んでいた。
賀状の宛先住所は「東大寺境内 ○○様でいい」と聞いたときは「ホンマか?」
と聞き直したが、その通りだった。
境内と聞くと瓦の乗った土塀に囲まれた中に家が建っていると思ってしまうが、
東大寺ほどの広大な寺院になると、どこまでが敷地なのか境界がわからない。
友人の家も寺の中に建っているわけではなかった。

この樹はケヤキだろうか。
樹齢は数百年はありそうで、幹がグロテスクに盛り上がり、種類がよくわからない。
地衣類が覆った表面は、複雑な色彩を見せている。
落ちた葉の紅葉が地面を赤く染めて目に鮮やかだ。
この日は余裕を持った時間帯に出かけたことと、雨や雪に降られなかったこともあって
ほぼその場で描き終えることが出来た。
明日元旦は雪が降るという予報が出ている。
夕方から気温はぐっと下がりはじめた。
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Tag:Landscape Paysage 風景画

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