最近見つけた風景画のこと

 11, 2011 20:30
最近仕事が遅く、今取りかかっている絵が進んでいないので
今日はある風景画を紹介しようと思います。
下はある巨匠の作品なのだけれど、
誰だかおわかりになるだろうか。

ルドンの風景画1
・・・・
実はルドン(Odilon Redon 1840-1916仏)の作品である。
おわかりになる方には別に感想もないかもしれないけれど
私にはリトグラフや神話世界、花の画家であるルドン
このような地味ではあるが見事な風景画を描くことが全く意外で、
またそれを差し引いても、この質感あふれる作品に強く引きつけられたのである。
描かれている岩、浜の砂、午後の日差しのあたたかさ、
空気感みたいなものががダイレクトに伝わってくる、
それはコローあたりの風景画の巨匠を思わせる。美しい作品だ。


先日久しぶりに神田の街に寄って古書を漁っていたら
ルドンの図録が安く出ていたので(400円!)買ってきた。
1989年はルドンの生涯をカバーする回顧展だったようで
上のはそこに掲載されていた作品の一つだ。
私が好きなルドンの花の絵も結構展示されていたようで
見逃したのが今となっては残念だ。
ルドン図録1989年
ルドンはご存じのように、黒一色の版画、リトグラフ、デッサンから始めて
パステル画を中心とした色彩豊かな神話世界を描いて巨匠となった。
後に描いたパステル画はなんといってもすばらしく
少し怪奇趣味のあるリトグラフの作風からは想像しにくい。
また、花の絵は、他の画家達にも無数に描かれてきた画題だが
ルドンの作品はそれと一目でわかるスタイルをもっている。
F・ラトゥールは得意とした花の静物画と神話世界の作風は大きく異なっていたが
ルドンは同様の画題をあつかっても、タッチの差はあまり見られない。
素人目にも「同一」の作家だとわかるだろう。
ルドンの花

でも注目したのはそういった「花」や「神話」作品ではなく
図録中でも点数の少ない風景画である。
ルドンの風景画2  ルドンの風景画3

これらの風景画はサイズも小さく、画家本人は習作扱いで描き、
表立って発表することもなかった。
でもルドンは一生涯にわたって風景を描き続けたそうだ。
自作を指して初期の頃には、油彩画家となるための習作だといい、
後年は自信をつけたようで「文句のつけようのない作品」だと語った。
しかし描いた風景はあまりに地味で何の変哲もなく、
あるものはただの岩、あるものは大きな水たまりだったりして
売るという目的にはとうていかなわない作品ばかりだった。
それらは先日紹介したこちらのルドンの専門サイトでも見ることができる。

小さなサイズの風景画を習作としてたくさん描いた点はコローにも似てるが、
コローは風景画の巨匠であり、そういう風景を描くのも当たり前といえば当たり前だったが、
同じ様にそれらを発表することはなく、没後に引き出しの中などから発見された。
「ナルニの橋」などは小さな習作をを元にして、サロンに出品した本画を制作したりしているが、
実は元にした小さいサイズの方が注目すべき作品が多く、
本画のほうは、今となってはむしろ「凡作」としか言いようがない。
他にも小さな習作群には外光を荒いタッチでとらえたところが注目され、
そこに印象派の先駆けを見ることができる、
と赤瀬川源平の著書にも書かれていている。
実際、上記の「ナルニの橋」はコローのいわゆるフォンテーヌブロー系の森の絵以外では
最も引用される作品であり、画家の中にも好きな人は多い。
私も尊敬している作品の一つで、ほぼ原寸大で模写もしている。
ナルニの橋

コローの話が長くなってしまったが
ルドンには、人知れずすばらしい風景画を多く描いていたことを発見して
私はルドンをすっかり見直してしまった。
神話世界とは無縁の我らアジア人にとってもこれらの風景画ならなじみやすい。

ところでルドンのパステル画に見られる独特の色彩は
ピカソの最も美しい作品を生んだ「バラ色の時代」と通じるものを感じる。
制作時期もほぼ同時期なのでどちらが影響を受けたかはなんとも言えないが
どちらも美しい作品を残した。


先日、描きたい何人かの肖像を描いてしまったあと、
少し画題を探して迷っていたら仕事が忙しくなって
なかなか筆をとる時間がもてなくなってしまった。
少しずつ描いていいるけど、完成まではもう少しかかりそう。
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Tag:風景画 ルドン コロー

COMMENT 5

Thu
2011.03.03
14:52

ぱんどる #-

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No title

本当にぱんどるです^^;
あ!私の書き方がマズカッタ
コローではなくルドンの画集です。
コローは15年くらい前でしょうか?
ずいぶん気合の入ったコロー展を上野だったかの
美術館で開催したときの画集は持ってます。
私の風景画は、コローやらバルビゾン派に似ていると
言われ観にいった記憶があります。

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Wed
2011.03.02
23:01

タブロウ #-

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No title

ほんとうにぱんどるさんでしょうか。
準備でお忙しいのにお寄りいただいてありがとうございます。

コローのいい画集をお持ちのようですね。
海外で買いたいものは、そういうものですよね。
Amazonがあっても英語の本はラインナップされていますが
それ以外の語圏のものは手に入りにくいです。

Edit | Reply | 
Wed
2011.03.02
22:30

ぱんどる #-

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No title

確かにコローのようなタッチの作品です。
ルドンは、濃淡白黒の時代が長く
色彩を使った作品は、晩年のみと聞いたことがあります。
個人的に大変好きな作家でフランス在住時代に
現地で画集を購入し大変影響を受けたものです。

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Tue
2011.02.15
21:14

タブロウ #-

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No title

アイビーさん、こんばんは。

そのときに知って嬉しかったことを書いているだけなので
もともとはそんなに詳しくはありませんよ。
私はグリムショーのほうを知りませんので、後ほど勉強することにします。

コローはあれほどの巨匠なのに、国内にいい画集がありませんね。
70年代に美術出版社から「世界の巨匠シリーズ」が出ていましたが
「ナルニの橋」が収録されていないんですね。(同シリーズの「印象派」に入っています。)
海外でも画集は少なく、少し前に出たもので分厚いものがありますが
以後コローのものが出ていないせいか、古書価格もかなり高価です。
私は幸運にも昨年ヤフーでかなり安く入手できましたので
そのうちブログで紹介しますね。

Edit | Reply | 
Tue
2011.02.15
19:51

アイビー #2toZYr9Q

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No title

タブロウさん、お詳しいですねえ・・・。
私はルドンは幻想的なパステル画しか知らないのですが、
正統派な?風景画も描いていたんですね。

ところで、実は私、コローの風景画が大好きでして。
それもフォンテーヌブローの森の絵の。

グリムショーも好きです(^^)

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