思い出の街、雪の日(6P)

 15, 2011 16:09
雪の田園調布-1

先週末から週明けに掛けて、日本中に降雪があり
東京もほとんど積もらなかったものの、夕べは何年かぶりの雪景色を見ることができた。
雪が積もって喜ぶのは都市部のノンビリ屋と子供ぐらいのものだが、私もそのうちの一人。
先週から取りかかっていたのが雪景色だったのは偶然だ。

絵の場所は東京の田園調布。
しかし今のこの街ではない。
かつて住んでいた10年前、大雪の日の風景だ。
・・・・
今から7年ほど前まで、数年間この街に住んでいた。
名の知れた高級住宅街だが、
所帯を持つ直前にこの街に越してきたのは家賃が安いからだった。
この町には古い家が多く、マンションも同様で、
私が住んでいたのは築40年の老朽マンションだった。
そのおんぼろマンションで所帯を持ち、子供が生まれ、幼稚園にはいるまでの
忙しいながらも輝くような時間を、この街で過ごした。
物価は高く、越してきた時には近くにスーパーもなかったが、
静かで風景にも歴史と落ち着きのある、いい街だった。
私の実家のある奈良の「学園前」という街は、ここ田園調布をモデルとして作られた街であり
確か駅前の石碑にそう書かれていて、
子供の時から「田園調布」は遠い東京の旧知の地名だった。
この街を懐かしく思ったのはそのせいもあるかもしれない。
ちなみにその奈良の「学園前」をモデルとして作られたのが「たまプラーザ」である。
このことも「たまプラーザ」駅前の石碑に書かれている。
こちらの街も私には、どことなく懐かしさを感じる街なのだ。

絵は住んでいた10年前頃の街を描いたもので、
向かって左側はこの街の新生を告げる東急の駅ビル(2階建てだが)、
高級食材を扱うスーパーが入り、右は古い町の雰囲気を残す商店が並んでいた。
三軒のうち(実際は二軒)真ん中は、越してきたばかりの時には小さな本屋だった。
その右隣は理髪店である。
老人ばかりになってしまったこの町で商売をやっていくのは難しく、
どこも年老いた店主が、自分の代限りと覚悟して細々と続けている。
逆の左端、明かりが灯っている雰囲気のある二階建ての建物は
オープンしたばかりのカフェ・デリカで、
手作りの総菜をパンと飲み物とともに比較的安価で供する、
チェーン店ではない、オーナー手作りのカフェはこの街に新風を吹き込んだ店だった。
センスのいい店内内装もオーナー手作りだったと記憶する。
今はけっこう立派な店になってしまったようで、料理の値段も少し高くなったようだ。
倉庫代わりに使っていた土蔵の倉はまだ残っているだろうか。

この街並みの落ち着いた美しさが好きだった。
2001年、大雪が降った日、私はカメラを手に、
一日中歩き回った。
絵はその日の写真を基にしている。

ところで、日本では珍しく絵になるこの街を描いた画家は意外に少なく、
猪熊弦一郎や小絲源太郎がこの街に住み、小絲画伯が風景画を残している。
歴史ある駅舎はこの絵の2000年頃に再建されたが、
もとになった駅舎を小絲画伯が作品に描いている。
その頃も、今とそれほど風景は変わっていない。
「金持ちの住む街」と揶揄されることが多いが、
お互いにいたわり合う上品な老夫婦を買い物の時によく見かけた。
この町に住んで良かった思う、気持ちの良い週末の風景だった。
その町全体が白で包まれた日の景色は今でも最も記憶に残り、愛する風景だ。
まだ何枚か、絵にできそうなのがあるので、
間に合えば季節が寒いうちに描いてみようと思う。

週末一応仕上がったつもりでいたが、
昨日の雪を見て、降雪の描写が観念的だと気がついたのは
やはり実物を前にしたいとわからないことであり、
乾ききっていなかった雪を拭き取って修正した。
私の風景画はその点、記録画であり、自身のノスタルジーである。
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Tag:油彩 風景画

COMMENT 4

Wed
2011.02.16
11:36

タブロウ #-

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No title

hananoiroさん、こんにちは。

「描く」、その行為には人それぞれの心の中に、
なんらかのモチベーションがきっとあるのだと思います。
hananoiroさんに言われてみて私の場合、人も静物も風景も
すべて今は「ノスタルジー」なのだと思いました。
「現在」を描いてもそうです。

学園前、ご存じだったとは奇遇です。
大神神社は書き初めで毎年参加していましたが、残念ながら行ったことがないんです。
そのうち帰省時にでも行ってみたいと思います。(もう何年も帰省していませんが)

Edit | Reply | 
Wed
2011.02.16
09:21

hananoiro #-

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No title

こんにちは!
いつもブログと作品を見せていただいて思うのですが、タブロウさんの作品には必ずその絵を描く訳。。思いがはっきりとあって、
自分をかえりみて、見習うべき重要なことだと。教えていただいています。

奈良の学園前。訪れたことがあります。
学園前に住んでいた知り合いに大神神社に案内してもらいました。
印象的な神社で忘れられず、3年ほど前に再び参拝しました。

田園調布も素敵な街だったのですね。
昔のいい風景がどんどん失われて、残念に思うことが多いですね。

Edit | Reply | 
Tue
2011.02.15
21:31

タブロウ #-

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No title

アイビーさん

自分にとってその絵がいい風景画かどうかは、
描かれている風景にノスタルジーを感じることができるかどうかなのだと思います。
行ったことがあるかどうかは関係ないんですね。
私自身はまだまだこの絵に不満なんですが、
そのうちもう少し良くなれば、と思っています。

アイビーさんの風景画、ぜひ見せてください。

Edit | Reply | 
Tue
2011.02.15
20:00

アイビー #2toZYr9Q

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No title

本当にノスタルジックな作品です!
田園調布もこんな時代があったんですね・・・。
こういう寂れた街並みのほうが絵になりますよね。

観念的な雪の描写を拝見したかったです(^^)

私も人物と平行して風景画を描いているんですよ。
今まで風景なんて描くものか!って思ってたんですが
桜を描いて、妙に描きたくなって。
すると、なんて風景画って楽しいんだろうって。

タブロウさんみたいに上手く描けませんが
完成したら見に来てください。

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