デザインと盗用

 19, 2015 01:28
オリンピックのシンボルマークをデザインする栄誉に浴したデザイナーが
日本全国からつるし上げられている。
指摘されるまで見たこともなかったのは本当だろう。
非難を浴びているデザイナーの佐野氏は、有名人とはいえ一般の民間人である。
社会的に見れば一人の市民をとりあげて無数の他人からネット上で法によらず、
これほど執拗につるし上げる図というのはどう見ても私刑である。

パソコンの普及で今や個人商店までオリジナルマークを創っている。
シンボルマークはシンプルな幾何学形の組み合わせや分割などの加工と
大文字小文字を入れて52文字のアルファベットを元に制作されることが多い。
そのうち、酷似したマークが必ず世界のどこかに存在する時代が来るはずだし、
すでにその時代の中にいいるのかもしれない。
訴えているベルギー人デザイナーはそういう時代にいることを想像してみれば、
彼にもまた、同じリスクはあったはずだし、今もある。

世界のどこかにある似たデザインが、際限なく舞台に引っ張り出される。
次に目をつけられるクリエイターは、きっとすぐにも出てくるに違いない。
有名であるほどリスクは高く、採用している企業は「うちは大丈夫か」と
青くなっているに違いない。

もう一つやり玉に挙がっている、
飲料メーカーのキャンペーン商品であるバッグのプリントデザインは
アート・ディレクション制という、デザイン会社独特のプロセスで制作されている。
社内からアイデアを募り、
プロトタイプから最終形までの指揮を執るのはアート・ディレクター(AD)である。
いわゆる美術監督のような役を担っている。
これはふだんアシスタントとして補助的な作業を担当している若手スタッフの
腕試しやスキルアップの機会ともなっている。
ドラマなんかでありそうな、部下の手柄を横取りするような図を想像すると大間違いである。
佐野氏のような優秀なADであれば、他人ながらなおさらそう言える。

ここで問題になるのが、デザインに使う絵柄(素材)の準備だ。
通常はここで、著作権に問題がありそうな画像はデザイナー自身が判断してはねる。
その素材の著作権について、社内で厳しくチェックしなかったとして今、
佐野氏の監督責任が問われている。

これまでの仕事ひとつひとつが佐野氏の今の評価を創ってきた。
日本が誇っていい才能の一人だと思う。
こういう葬られ方は、同業の末端にいるものとして見るに堪えられない。
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