日本でいちばん古い映画館「高田世界館」へ

 14, 2015 02:32
高田世界館
(オイルパステル)
友人から突然の誘いがあって、週末新潟まで車で出かけた。
行く先は、現存する日本最古かつ現役の映画館「高田世界館」である。
先日NHKでも紹介されたので、知っている人も多いかもしれない。
ここで現在、(今まで何度も書いた)友人が個人で買い付けてきた映画、
「マダム・イン・ニューヨーク」が上映されている。
友人が突然訪ねた理由はそのお礼と応援と、今後の上映企画についての話をしに。
私がそれにつきあったのは建前、
目的はもちろん現役最古の映画館を自分の目で見ることと、
番組の主人公でもあった支配人の上野氏に会ってみたいからだった。
それに50歳を過ぎて仕事を休み(というかヒマなので)、
突然おとこ二人旅に出る機会など滅多にあるものではない。
TVで見た直後という野次馬根性もあり、二つ返事で出かけることにした。

「日本最古の映画館」ではあるけれど、
経営を任されているのはまだ27歳の若い支配人上野君である。
劇場へ足を運ぶ映画人口が全国的に減っている昨今、
冬になれば雪深いこの地方で、今年104歳になる老朽劇場を
メンテしながら経営していくのは並大抵のことではない。
しかも「ヒットする作品」よりは、「見てほしい作品」を優先しているため
経営はより難しさを増している。
車でこの上越の町に入った時、まず感じたのは人通りの少なさだ。
ここで映画館を残してゆくための奮闘ぶりは番組でも取材されていた。
あれを見た映画好きなら「ともかく応援したい」という気を起こさずにはいられない。
友人は以前から作品の上映に関するやりとりで連絡を取り合っていたので
運営する上野君とはすでに知らない仲ではなく、遺産に近い劇場への思い入れも強い。
東京から4時間半をかけて到着し、挨拶を済ませたあと劇場の中を見せていただく。

高田世界館_外観
高田世界館_入り口

初めて訪れた気がしないのは、友人のおじさんが経営していた、
やはり奈良で最も古い劇場に二人してひんぱんに通った想い出があるからだ。
しかし映写室にまでは入ったことがなかったので、
そこに足を踏み入れたときには映画「ニューシネマ・パラダイス」を思い出し、
肌が泡立つような思いがしたものだ。

高田世界館_切符売り場
映写機

劇場は2007年に一度取り壊しの岐路に立たされたことがある。
そのとき、地元の有志と映画ファンによって
NPO法人「街なか映画館再生委員会」が発足、ぎりぎりのところで保存が決まり、
雨漏り、イスやトイレなどの補修を重ねて現在に至っている。
訪れたこの日も、バス通りから少し奥まったこの映画館入り口への通路を
冬の雪から守る屋根の補修工事が行われていた。
大規模なリニューアルをしないのはお金の問題もさることながら、
ここではたとえはげた床一つ見ても100年の歳月を感じさせるからだ。

最終回が終わったあとは上野君行きつけの居酒屋へ場所を移した。
深夜まで映画談義と、地元直江津から届く新鮮な魚と、地元の酒肴を堪能する。
勧めてくれた地酒はまちがいなく旨いはずで、
あまり飲めない私と友人は彼よりずっと年長にもかかわらず、まったく残念な客であった。
劇場の経営は苦しいけれど、アルバイトも頼まずに何から何までひとりでまかなうことで
ともかくも劇場は運営し、彼自身の人件費も出していることに心から脱帽する。
会った人を引き込むような人なつっこい人柄と
華奢な体のどこからあのエネルギーが出てくるのだろう。
私が東京へ来たのが、現在の彼と同じ27歳の時。
あの頃もしここの経営を任されていたら、すぐにも行き詰まったに違いない。
しかし彼もひとたび体調でも崩せばすぐにも立ち行かなくなり、
2007年に直面した「廃業」「取り壊し」の現実に直面する。
産業遺産というと大がかりなものになりがちだけれど、
こういう個人の手で薄氷を踏むように残されてきた町の産業遺産を
どうにかして支えてゆく方法はないものだろうかと思わずにいられない。

翌日は朝の掃除を手伝って心ばかりの応援をし、
そのあと、滅多にない機会なので、劇場のロビーで描かせてもらった。
この日は外国人による自主上映で貸し切りになり、上野君は午後から留守だった。
描き終わった頃、ふらりと一人の女性が入ってきて
「ボランティアを募集していると聞いたのですが」と言う。
そういう人が現れたことに、ちょっとほっとして劇場をあとにすることになった。
運営は並大抵のことではない、けれども、映画好きにとってこれは夢のような仕事だ。
訪れた我々二人とも実はうらやましくて仕方がない。
がんばれ高田世界館!
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Tag:Landscape Paysage 風景画

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