北品川の路地

 18, 2016 22:29
北品川の民家-2
(ペン、色鉛筆)
ある映画を見ていたら、見覚えのある路地が出てきた。
昨年描いた北品川の古民家で、このあたりではそこそこ有名な場所だ。
描きにいったのはついこないだのことなのに、こういうとき、どこか懐かしい。
で、再度出かけてみることにした。

映画ではノスタルジックな景観をスナップ的に切り取っているだけではなく、
地の利をストーリーにうまく取り込んでいる。
四国から東京へ転勤になった主人公は、釣り好きであることから
釣り船の船着き場となっている運河に面したマンションに自宅をおくことにしたのだ。
朝、主人公が通勤に通っていくこの路地はマンションの隣に実際にあってそこを通り、
運河の向こう岸に係留されている、なじみの釣り船一艘を駆って出勤する。
ここをよく知っている人や、釣り船をよく利用している人が喜びそうな設定のこの作品は、
長くシリーズ化された「釣りバカ日誌」(第一作)である。
山田洋次さんの作品(本作は脚本)は、いつも日本人とその風景を丁寧に描かれているが、
いつの間にか「かつての」という形容詞が必要になってしまっている。

ここは区の景観保存指定も受けているが、昔からの住人が住み続けている、生きた下町だ。
高層ビルの谷間に残っているのはわずか50m四方ほどの限られた空間だから、
昭和の箱庭のようなたたずまいだ。
そのうち無人になるか再開発されて、外観はそのままで
カフェや雑貨屋へと変わって行くのかもしれない。
下町には猫が多いけれど、ここもそうだ。
この日描いていて、左から歩いてきた猫は昨年見たのと同じだろうか。
事故に遭ったか、後ろ足が片足になっているのは痛々しい。
でも近所の人から大事にされているようで、描いている私の目の前で座り込み、
警戒することもなく毛づくろいを始めた。
いつの間にかいなくなっていたが、そういう猫が安心して住み着いていることに、
この一角が小さいながら生活の場として生きていることを感じる。

かつて都市部ならどこでも見られた古い日本家屋を前に、
今もどこかで造成されている新しい住宅地や町について考えてしまう。
一軒一軒の家がそれぞれデザインを主張する町の風景。
その奇妙さはよくいわれることだけれど、外観の主張だけでは足らず、
家の内側からの住環境や権利などの主張は地域全体にもおよぶ。
子供の声も騒音のうちと言われる町もある。
そこでは、片足の猫は生きて行けないような気がする。
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Tag:Landscape Paysage 風景画

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