画家のアトリエ

 15, 2016 12:19
朝井閑右衛門画伯のアトリエ(ガッシュ)


昨夜仕事に追われるなか、やや強い揺れがあったが、
まさか九州の地震が東京に及んだとは思わなかった。
震度7とはどれほどの揺れなのか、東京でけっこうな揺れだったから
震源地付近ではそうとうだったのだろうと、今はまだ想像するほかない。
犠牲になった方はほんとうにお気の毒に思うけれど、
城の石垣まで崩落するあれだけの地震で、よくこれだけで済んだことだと思う。
東北の復興がオリンピックのために人手が足りず遅れ気味だというなか、
熊本の今後が心配だ。
東京は東と西の復興の足を引っ張るやっかいな存在になってきた。


天井も高い立派なアトリエはもちろん私のではなく、
朝井閑右衛門画伯の非定期で公開されている由比ヶ浜のアトリエだ。
友人が先週イベントのためにここを借り、
「おもしろい造りだからおいで」と声をかけられたので遠路出かけた。

画家存命中のまま、時が止まったように保存されているアトリエ。
厚塗りの作風で知られる画家の作品は、
下塗りのまま今も筆入れを待つキャンバスが、少なくとも8点はかかっていた。
でも入れるのはここまでで、林立するイーゼルの前に立つことはできない。
手前に並んだ画材の入った箱を覗いてみると、
絵の具はホルベイン、パステルはレンブラント、オイルパステルはわからない。
あと日本画用の岩絵の具が箱の中に並んでいた。
何に使うのか、小さな熊手が筆とともに置かれている。
左端のイーゼルにかけられたタンバリンは、助手(?)の人を呼ぶためのものだろうか。
おもしろいのは座椅子はもちろん、イーゼル、テーブル、そして奥のタンスも、
あらゆるものにキャスターをつけて、いつでも簡単に動かせるようにしてあることだ。
熊手はそれらをたぐり寄せるのに使ったと思われる。
展示用ではなく、実際もこのように制作途中のキャンバスをたくさん並べて、
次々にイーゼルごと入れ替えて手を入れたということだ。

座椅子の背後の棚にはお気に入りのおもちゃが並んでいる。
見覚えのあるブリキのおもちゃが多い。
多くがドイツ製のそれらは、漫画的な日本製に比べて彫像的だ。
子どもにおもねた意匠の日本製Tin Toyは世界中で人気があるが
大人の嗜好をそのまま縮小したような欧州製のそれらが
猪熊弦一郎ら多くの芸術家の心をつかんだのもよくわかる気がする。
ほかに巨大なメリーゴーランドのおもちゃが床に置かれていたが、
木馬にまたがる人形はすべて、画家の手作りと覚しき愛嬌のある人々が
まるで歓声を上げているかのように、主亡き今も活き活きとした表情だ。

ここは南向きのようで、陽の光がさんさんと入る。
にしても、この天井の高さとアトリエの広さとでは、
冬の寒さは老人にはかなり厳しかったに違いない。
広々としたアトリエ奥には、これもまたキャスター付きの畳台があり、
それは寝台でもあったようで、冬の夜の寒さが思われる。

一度アトリエの実物を見てみたかったので、この日はいい機会だった。
画伯の娘さん(といっても私よりずっと年上のようだったが)がおられたので
少しお話しもさせていただき、貴重なお話も聞けた。
この秋には練馬の美術館で展覧会が開かれるとのことだ。
ほかには低いところに流しがあったりして、
いろいろ制作に使い勝手がいいように設計されているようだ。
私など生涯アトリエなど持つことはないだろうが、見ていて興味は尽きない。
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