「ピカソの陶器」

 27, 2017 12:17
「ピカソの陶器」

仕事場近くの老舗古書店店頭には、1冊100円の文庫とともに
美術展カタログが300円ほどで並んでいる。
若い世代は本を読まなくなったと言われているが、
ここでも古書を漁っているのはミドル以上の人ばかり。
店も最近は、高く売れそうな本はネット販売に出したがるので、
店自体の魅力も落ちている。
そんなある日、ピカソの函入りの豪華作品集、
「ピカソの陶器」がわずか300円で並んでいた。
先日TVで「私の履歴書」に出演していたニトリの社長が
自宅で話しているその肩越しに、ピカソの女性を形どった陶器が
棚の中で見え隠れしていた。
陳列の仕方はあまり趣味良くは見えなかったけれど、
意外な大きさと造形の面白さが印象に残って、「欲しいなぁ」と思ったりした。
本自体はずいぶん重いし場所もとるので、
高ければまず買わない本だけれど、安さに魅かれてこれを購入。
持ち帰って開いてみれば、これは素晴らしいピカソの陶芸作品の数々。
ピカソ晩年の7年余りを陶芸制作に没頭した頃の膨大な作品が収められている。
絵画はもちろん、彫刻にも革新的な作品を残したピカソは
陶芸でも素晴らしく自由な造形を試みている。

その頃、同じく晩年にあった日本の北大路魯山人が
欧州旅行の途次、ピカソを訪ねている。
パリでは、今でいう三ツ星クラスの家鴨料理で有名なレストランにて
看板料理を食したが、翁の口には合わなかったようである。
再度火の通し具合など細かく指示して出させ、
日本より持ち込んだ醤油と粉わさびでやっと満足した。
ピカソを訪ねたのも画家が最近陶芸を始めたと聞いたからで
そこでもやはり器は気にくわなかったようだ。
陶器にはピカソの原色の絵付けが施され、彫刻のような造形が試みらている。
作品としては度胆を抜く面白さがあるものの、
魯山人にはあのような「料理の造形」を殺す皿など
悪趣味以外の何物でもないと映ったのだろう。
著書に掲載されたピカソとの記念写真には、ピカソのいつもの笑顔とは対照的に
全くつまらなさそうな翁の苦々しい表情がおかしい。

ピカソは陶器に絵付けと彫刻的な造形の両方の面白さを発見したのだろう。
あまりの自由さに見ている方が笑顔さえ出てくる。
スタンダードなフォルムの壺をぐっとひねるとまさに「鳩」そのものになり、
水差しの絵付けには壺の絵を描いたりしている。
丼に茶碗の絵を描くようなものだ。
いくつもの幾何学的な器をくっつけてできた抽象彫刻のようなフォルムは
女性になったり動物になったりする。
絵付けされた皿と思いきや、皿に乗った目玉焼きやフォークや魚は
粘土で作られたものだったりする。
ピカソの造形の自由さを堪能できる楽しい一冊だけれど、
訳がひどいのか元の文章が悪いのか、テキストはひどくて読めたものではない。

ピカソの陶器
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