Landscape1986 (F6)

 19, 2011 19:08
風景1986

東京に来る半年前、1986年の夏、私は旅をした。
北海道北端の街、稚内から鹿児島の薩摩半島南端、長崎鼻までの日本の南北ふたつの果てを
徒歩だけでつなぐ、という旅だった。

この絵はそのスタート地点からほど近い道北の、稚内から抜海に向かって歩き始めたところ。
オホーツク海側から日本海側へ抜けた所で、
海からの風がやわらかく吹き渡っていた記憶がある。
私にとってこれは「出発の風景」だ。

・・・・

実はこの場所の写真がなく、
日記に残った簡単な鉛筆スケッチと印象を元に25年後の現在描いたもので、
ほとんど想像の風景に近い。
ちなみに2000年に家族と車で再び訪れた時には、全く別の風景になっていた。


この日、出発を翌朝まで待てずに夕方から歩き始めた。
やがて坂道になり、そして突然風景が広がる高台に出た。
目の前に広がる海、空、道は、すべてが夕陽でオレンジ色に染まっていた。
あたりまえだけれど、日本は歩けば広い。
同じ日本国内でありながら、人が、言葉が、風景が変わり続ける。
この丘の向こう、あの岬の向こうに何があるのか、
その期待と好奇心に、毎日胸が沸騰していた。
今の時代、心から「自由な空気」を感じることは意外に難しい。
私はこのとき、かつて感じたことがないほどの自由な空気に、全身が包まれていた。
その幸福感で、めまいがしそうだった。

59日後、約3,000kmをすべて歩き通して薩摩半島南端に着いた時、
太陽は東シナ海に沈もうとしていた。
風景はそのときもオレンジ一色に染まっていた。


その年、ソ連ではチェルノブイリ原発事故が起こっていた。
あれから25年、今日本で起こっている事故を思うと、
そして東北のやさしい人、美しい風景の多くが失われた現実を思うと、
この1カ月のことは、夢であってくれないか、と思ったりする。
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Tag:油彩 風景画 Paysage Landscape

COMMENT 2

Tue
2011.04.19
23:36

タブロウ #-

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No title

hananoiroさん、こんばんは。
どういう仕上がりになるか想像できずに描き進めたものです。
結果として、写真で残すより良かったかもしれません。
そして25年前より、今は前を向くのに少し体力が必要ですね。

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Tue
2011.04.19
23:11

hananoiro #-

URL

No title

こんばんは☆
タブロウさんの想いがたくさん詰まった作品ですね!
「出発の風景」とおっしゃるように、道は遠く先まで続き、
未来は開かれている。。希望と期待に満ちていますね。

大震災に見舞われた方々のことを思うと、希望をもって。。と簡単には言えないですが
それでもみんなで一つに向かって前だけを向いていたい。。と思います。

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