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府中市美術館「長谷川利行展」

 27, 2018 10:05

府中市美術館へ「長谷川利行展」を見に出かけた。
18年振りの回顧展なのに、今のところまだ空いていてゆっくり見られる。
思いうかぶ利行のいい作品はほとんど見ることができ、
近年発見されたものも公開されている。
日曜美術館でも1978年以来40年振りに取り上げられたのも昨年なので、
会期が短いせいもあって、大きな宣伝はなかったようだ。
ともあれ、これは長谷川利行の最高の展覧会だった。

長谷川利行展
(「ぶらり、いこう」ここの美術館の宣伝コピーは駄洒落が多い。
 ※写真右のような、無料でしゃれたお土産がある。)


2000年の展覧会を見ていないのでその間、
作品集や図録を見るだけだった。
目になじみのある作品の実物が目の前にズラリ並んだ様は壮観。
「大和家かほる」や「安来節の女」「Y子の像」の並ぶ壁の隣に、
「酒祭り・花島喜世子」と地味だけれど好きな「四人裸婦」がかかっていて、
長く待っていた身には目がくらむような展示だ。
「大和家かほる」と「安来節の女」は思っていたよりも大きく、
大作「赤い機関車庫」と「夏の遊園地」には圧倒された。
(「夏の遊園地」は40年振りの公開)

赤い機関車庫
(「機関車庫」1928年)

夏の遊園地
(「夏の遊園地」1928年)

どちらも利行にしては例外的に大きな作品ながら、
緩んだところが広い画面のどこにもない。
やっぱりすごい。
私が最も好きな利行作品、「少女」と「荒川風景」も出ている。
想像していた通りの大きさ、いい作品だった。
「少女」は収蔵先の群馬県立美術館のWebサイトにアップされている画像が
全体に青っぽかったのを、印刷時の色かぶりだとばかり思っていた。
今回実物を見て、本当に青っぽい作品だったのだとわかった。

晩年の白い風景画は、実はこれまでちょっと苦手で、
画集でもさっさとページをめくっていた。
今回作品の実物を見て、このはかなげな作品の美しさを見直した。
今回の図録を見ても写真ではやっぱりいまひとつで、
これら白い風景画は実物を見ないとその良さはわからなかった。
キャンバスの地色のままとも思える白地に少量の絵の具で描かれた
線画にも見える画は、毛筆に通じる線の画家、利行の世界がはじけている。

ネット上には長谷川利行について、いろいろな記事が出ているけれど、
最も充実した内容をアップされているのが「今日も日暮里富士見坂」。
ここを読めば、利行に関してはまずなんでも記載されている感じだ。
これまでの伝として、利行は終焉の地である板橋の養育院で息を引き取った後、
最後まで持っていた作品を含むすべての持ち物を焼却処分されて、
一切が無に帰したと伝えられてきた。
ところが上記のサイトによると、その焼却されたと思われてきた作品が、
驚くことに実は現存することが、最近わかったとある。
スクラップ帳に貼り付けられたような作品らしいけれど、
今回の展覧会には出品されていなかった。
私はこの作品帖を、以前見ているかもしれない。
7年ほど前、東京駅地下街にある古書店を覗いたときのこと、
ガラスケースの中に恭しく展示された、
少し大きめの単語帳の束のようなのが陳列されていた。
開いた一番上の絵しか見えなかったけれど、
キャラメル箱くらいの大きさしかないそれらの画は少ない色数で描かれた、
西洋のイコンのような画だった。
「長谷川利行作」とあって、確か950万円の値がつけられていたと思う。
同時期にネットの「日本の古本屋」にもそれとおぼしきものが、
やはり同じ値段で出ていたから、記憶している人もいるかもしれない。
それがその作品だったかどうかはわからないけれど、そんなことがあった。
値段に腰が引けて見せてもらうことも、話を聞くこともしなかったのが
今となっては惜しいことをした。

本展覧会は利行が好きな人には必見なのはまちがいない。
難を言えば、一つは素描の展示作品が少ないこと。
もう一つは図録の色とレイアウト。
最近の傾向として本棚に収まりのいいB5サイズはやや小さめだ。
ハードカバーの造本は立派で、表紙デザインやしっとりした紙の質感もいい。
ところが、中の作品の写真の色が実物とかなり違っている。
全体にコントラストが強めで鮮やかすぎたり、
逆に赤が茶、ブルーがグレーになって、彩度がかなり落ちていたりする。
実物を見ている人が色のチェックをしていないように思う。
そして、作品の写真が小さいこと。
比率を厳密に合わせる必要はないと思うけれど、
利行最大の作品「機関車庫」がガラス絵の作品より小さかったりする。
印刷技術はずっと向上しているはずだけれど、
今一冊だけ持つならば2000年の図録のほうを選ぶかも。
ただ、ハードカバーながら値段が2300円と安いのでつい買ってしまった。

長谷川利行展図録

美術館まではちょっと遠いけれど、なんとかもう一度出かけたい。
長谷川利行展 Webサイト
会期
2018年5月19日(土曜日)から7月8日(日曜日)まで
前期と後期で作品の入れ替えがある。
月曜休館
観覧料 一般900円でこれも安い。
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COMMENT 2

Wed
2018.06.06
11:47

タブロウ #3h4yWL0g

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馬越様。はじめまして。
Blogを書いておりますタブロウこと坂東と申します。
見てくださっていると聞いてとても嬉しいです。ありがとうございます。
ともすれば仕事だけで定年を迎え、その後はただ毎日を送るだけの日々になりがちな私たちですが
若い日に絵筆を持った経験は、定年後にこそかけがえのないものになってくれると思います。
見て楽し、描いてなお楽し、ですね。
私はある程度時間をかけて描くほうですが、
時間を取れない時にはパステル(オイル)を持って短い時間で描くときもあります。
最近は水彩を含め、ずっとそれが続いていますが、
時間があってもなくても描けるのは画のいいところですね。
長谷川利行、本当にいいですよね。
私ももう一回出かけて見たいと思っています。
馬越様もこれからも長く描いてくださいね。
こちらのローカルBlogも時々のぞいていただければ、嬉しいです。

Edit | Reply | 
Wed
2018.06.06
09:28

馬越 正就 #-

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はじめまして

ネットで偶然貴ブログを発見し、時折見させていただいています。高校、大学と絵を描き続け、社会人となってからもしばらくは描いていましたが、子供が大きくなり仕事が忙しくなってやめていたのですが、退職後30年ぶりくらいにまた描きだしました。吉祥寺で個展を4回ほど開催しました。日々描いていますが、公募展などには出していません。若いころに白日会に入ってましたが、なんだか面倒で・・・。絵はゴッホ、ロートレック、マルケ、ルドンなどが好きです。というか最近の絵はあまり見ず、昔の絵ばかり見ています。日本人では中村つねが好きですが、最近長谷川利行の展覧会に行き、感動しました。自由な色使いなどとても真似できないと感じます。友人に画家で「菊地理」さんという方がいますが、彼のイッキ描きに触発されて私も短時間で描きます。これからも時々見させていただきます。

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