街角(4F)~師に画を届けて

 30, 2011 23:22
街角

都会にも風景の美しさに立ち止まり、息をのむ瞬間はある。


日本には何年も前からずっと雨が降っている気がする。
そしてこの雨がやんだ時には、
空は晴れていても、日は暮れてしまっているのではないか、と思う。
・・・・
先週末は想像もしなかったいいことが二つほどあって、
どちらも私の画についてのことだった。
そのことがあって、これからもこつこつ描いていこう、という、
希望がもりもり湧いてきたのだった。

週末、ここでも書いた私の師のところへ、以前描いた肖像を届けに行ってきた。
なにも雨の日に届けなくても、と思ったが、先延ばしにするとまた
いつになるかわからなくなる。
老師はたいへん喜んでくれた。

震災後初めて会った師は、
若い時に原子力について、おそらく業界では初めて徹底的に調べぬいたとのことで
40年たった今も、正確な情報と見識を持っていたのに驚いた。
私のにわか仕込みとは年季が違うが、最終的な意見はまったく同じ、
「電気を使うものが、過疎地の経済弱者にそのリスクを負わせるのは根本的に間違っている」
「原子力、核エネルギーは、人間の扱える領域のものではない」ということだった。

ところで師の壁ギャラリーは、
現在はこのようになっていた。
師の壁ギャラリー2
真ん中にあるレンブラント、これは不思議な画だ。
裏から見たキャンバス。
完璧な構図の中に、巨匠が描くまったく意味のないモチーフ。
まわりの壁と、左奥に筆も持たず異様な衣装を着る画家自身が
念入りに描かれたキャンバスの裏側に比べ、どちらもたよりない筆で描かれている。
光の方向も不自然だ。

こんな画がスクラップしてあって、
ときに画との対話が行われているのだった。


震災も原発も、そして画も見る人聞く人に必要とされるのは想像力だ。
悲劇的な報道を見ても、それがなければスルーする。
一瞬の驚きの後、せいぜい「うちの子でなくてよかった」と思う。
そういう人々には画もまた必要のないものだ、
という意見の一致もあった夜だった。
師は津波の後に地面に転がった、汚れたランドセルをTVで見た後、
朝までひとり、泣き続けたとのことだった。
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Tag:油彩 風景画 Paysage Landscape

COMMENT 10

Fri
2011.06.17
22:35

タブロウ #3h4yWL0g

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あとからその歩まれた道を耳で聞く我々には、まったくまぶしく映る。
経験された苦労を懸命に想像しても、やはりそう思う。
そういう運命の手前にいるときは誰にもわからないけれども
大きな不安を押しのけて歩いたものだけが死ぬまで失うことのない
「経験」と「思い出」をもらえるんですね。
私は別の「経験」や「思い出」をもらいましたが、
これから生きているうち、ぱんどるさんの感じた百分の一でも、
今度は絵の世界でそれを味わうつもりです。

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Fri
2011.06.17
21:56

それでは、ライブの醍醐味が消えてしまいます。
やはり 本物の前では 腰が抜けるほど驚き それを
明日の、一生のエネルギーにしたいではありませんか!
私は、完全に独学で絵を学びました。
誰も手ほどきをしてくれる人はおらないどころか
全て全くわからないフランス語表記の画材
買い物をするにもフランス語
朝から晩までフランス語の中で2年半を盲目状態で絵を描き憶えました。
筆洗いのオイルと加筆オイルが分かれていることすら知らなかった
日常のジェスチャーと美術館にある名画が教科書でありました。
救われたことは、美術館は何度行っても無料でチョイと頼み込んで
書類を書いたらイーゼルまで貸してくれて模写までさせてくれたこと
しかし、あの五体不満足なことが 猛烈なターボエンジンだったとは
今道となり たどっての感想となりました。

そして、なにより本物のウソをつかない大迫力 それは
説明の全くなかったおかげでの大ショック
アレこそがエネルギーになり 後輩につながるわけです!
私は、いつまでもビックリし続けたい!何でも知りたい!
理解納得した生涯はいやだなぁ~

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Thu
2011.06.16
11:37

タブロウ #3h4yWL0g

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作品の背景には今の私たちに思いもよらないことがあったりして・・
小説より面白いですねー
ぱんどるさんのお話を聞くと、新しいドアが次々に開く思いがします。

展覧会図録や画集には、絵のサイズを巻末に記述しているものがありますが
あれはやはり絵の下かそばに書いておいて欲しいと思います。

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Thu
2011.06.16
08:14

自分のために・・・・マズありえないでしょう~
その背景に、宮廷画家の時代からパトロンの時代も同じで
当時の絵描きは、職人的感覚での扱い 今のようなやたらと
上げ底された言い回し 「アーティスト」なるごまかしもなく
なんとか 売れて欲しい一心での攻防が日常に染み出ています。
あの大作を思わせる空間を極小作品に描く
どう考えても、腕前を見せる以外に背景は無く
ミニチュアールその流行が古典にもあるように
思いのほか小さく描くという業は、大作が多かったその当時背景を
見ましても目立つ作品といえます。
ドガのあのバレエ練習風景の大作の小さかったこと!
私もオルセー美術館でかなり驚きました。4号くらいの大きさしかなかった記憶がございますが
100号の大作かと思ってました。

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Thu
2011.06.09
12:58

タブロウ #3h4yWL0g

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No title

肉の開きの作品、あれは0号でしたか。
「どうだ」作品は他の画家にもありますね。
ドガにも大きいと思っていた踊り子の絵が、実際にはびっくりするほど小さいことがあります。
あれは自分のために描いた作品ではないでしょうか。
画家の周囲には大きな作品は置きたくないでしょうし
大きな作品は売るための商品のような気がします。
それだけに「欲しい」作品であります。

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Wed
2011.06.08
22:12

ぱんどる #-

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No title

レンブラントの好きな絵でルーブルにかかっている0号くらいな
牛の解体され熟成中のぶら下げられた肉が描かれた
作品がありますが、画像ですと100号はあるのかと思わせる迫力
号数をわざと小さくしてサイズアップの迫力を見せる
ある種の騙し絵の背景に「どうだ!」が聞くえてきます。

パレット?どうなんでしょう~パレットやら筆にそれほど意味は無いと思われます。
私は、この作品をフランスで見たように記憶しておりますが
今、その小さな画像では、判断出来ずコメントもその20数年前の記憶で書いております。
実際、絵の評論でグっとくるものを読んだことが無く、私は、料理も絵も なんでも受け売りは
せず、必ず自分のオリジナルでコメントするように神経を尖らせて書いています。

なにより、自分で描いて 現地でも本物を前にして模写もしましたし(この作品はしておりませんが)
教科書は、本物の名画のみでしたので
学校など行ってつまらぬ受け売りを身につけた方々よりは
衝撃を受けて心が心底焦って 貪欲に制作したものです。

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Thu
2011.06.02
17:58

タブロウ #3h4yWL0g

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No title

ぱんどるさん、こんにちは。
この作品については、今上野に来ていることもあって、
多くのブログで取り上げられているようですが、どれも通り一遍のコメントでスルーしています。
ぱんどるさんのコメントは、やはり制作の現場に立つ人のものですね。。納得です。
制作における極めて個人的な世界をキャンバスの裏側と質素な室内で表現しているのですね。
名声の一人歩き、なるほど。。
ところで背景の壁に掛かっている楕円形の板は、
(この写真ではわかりにくいですが)パレットでしょうか。
これだけ大きな板に描くのに、かなり細い筆を持っているのも興味深いです。

しかしこの絵は大きいのかと思ったら、わずか4号ほどの大きさなのですね。驚きです。
内に、外に、対話のできる作品は、やはりすばらしいです。

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Thu
2011.06.02
16:23

ぱんどる #-

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No title

レンブラントのその作品は、絵の裏というのも表の華やかさとは裏腹な側面を意味しており
大工房となったレンブラントのアトリエ    一人歩きする画家の名声を 
絵の中では壁のごとくに下げ 絵「制作」を前に出しレンブラント特有のドラマティックライトアップで
黙示録させる作品
イーゼルの足掛けが猛烈に削れているところが強調され制作は戦場を思わせ
今、この絵を見ているあなたと同じ位置に作家もいたのであるという
疑似体験自画像=絵描きの肖像そのものであります。

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Tue
2011.05.31
21:19

タブロウ #3h4yWL0g

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No title

hananoiroさん、こんばんは。
人に今できることはそれほど多くありません。
じっと考えている、悲しさを想像するだけでもいいと思います。
雄々しく立ち上がるばかりが貢献ではない、
誰かにいつもより優しくするだけでも、世の中はよくなっていくと思います。

いいこと・・・
実は私の尊敬する人、師を含むお二人の人に、
セガレと家内の肖像をとてもほめられたんですよ。
ふだん辛口の人たちなので、とても嬉しかったんです。
自分ではなかなか客観的に見られないですから。
私のような初心者にはとても効果があります。

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Tue
2011.05.31
16:06

hananoiro #-

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No title

こんにちは☆
「日本には何年も前からずっと雨が降っている気がする。」
描くことで現実逃避(こんな世の中から)してるのかな。。と思うこと度々です。

誰かの身になってみること。特に震災や原発の被害に遭われた方たちののことを想像することは
想像すればするほど自分の無力さだけがわかるだけで、なにも変わらない毎日を送ることしかできません。。

絵についていいこと。。なんですか??
都会の黄昏時もいいですね~

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