うちに母がいて、猫がいた頃

 12, 2010 17:15
猫、午睡

本棚を整理していて20歳頃のスケッチブックが出てきた。
開いてみたら猫のスケッチが何枚かあった。
この絵の二匹を飼っていたことさらすっかり忘れていたが、
スケッチにしては少し描き込んである。
鉛筆なのでもちろん色がついておらず、
その猫たちの写真さえ一枚も残っていないのだが
記憶とネットで集めた猫の画像なんかを参考に、これを色つきの油彩にしてみた。
記憶の断片を紡ぎながら頭の中に像を結び、絵にしていった。
猫というのは野生をついに忘れない動物、とかいわれるが
飼い主にとってはコケティッシュな生き物で、
部屋ではすり寄ったり寒ければ膝の上に追っ払っても何度でも上ってくるくせに、
一旦外に出ると見かけて呼んでも知らぬ顔、近寄れば私の顔を忘れたか、逃げていったりもする。
誠に憎らしいがそこにまた不思議な魅力があって、
要は得な性格のペットなのである。
ただ、エサをやっている母だけは例外で、外でも母が呼ぶと「にゃあ」と泣きながら
さもうれしげにすり寄ってくるのは現金なもので
つまり、気の向いた時にちょこっと撫でてやっている私くらいのコミュニケーションでは
まるで「お話にならない」ということなのだった。
親しくなるハードルはかなり高いと言えよう。
外へ行きたいと思えば重い窓をこじ開けてでも出て行き、
真冬でもこの行動は実践されるため、枕元の窓を就寝中に開けっ放しにされた母は
冬はいつも風邪をひいていた。
空腹な時は餌にありつくまで「にゃあにゃあ」泣き続けるが、
そうでない時はたとえ自分の好きなもの、うまそうなものを出されたからといって
「半分だけ食べてみようか」というような食い意地の張ったようなことはけっしてせず、
この点見上げた自制を働かせる。
このあたり、見習うべきは人間の方であった。

30年近くがたち、
この気持ちよさそうに眠っている二匹もすでにこの世にはいない。
そして彼らの世話をぶつぶつ言いながらもやっていた母も
10年前に亡くなった。
母がいなくなると実家には猫は一匹もいなくなった。
今、こうして猫は絵として今しばらく残ることになったが
母の絵は残っていないのはなんという親不孝だろう。
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Tag:油彩 猫の絵 油絵

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